サフィエ・スルタン

サフィエ・スルタン：オスマン帝国に名を刻んだ女性

サフィエ・スルタン（1550年 - 1618年）は、オスマン帝国のスルタン、ムラト3世の寵姫であり、後のスルタン、メフメト3世の母として、帝国に大きな影響を与えた女性です。彼女の生涯は、陰謀と権力闘争に彩られています。

生い立ちとオスマン帝国へ

サフィエの本名はソフィア・バッフォとされ、ヴェネツィア共和国の貴族の家に生まれました。しかし、バルバリア海賊に捕えられ、イスタンブールへ送られた後、奴隷としてオスマン帝国のハレムに入れられました。そこで「サフィエ」という新しい名前を与えられ、ムラト皇子の寵姫となります。

母国との交流

1574年、ムラト3世が即位すると、サフィエは寵姫として権勢を振るいます。彼女はヴェネツィア人としての出自を忘れず、母国の利益のためにヴェネツィア大使と秘密裏に交流しました。その情報がヴェネツィアに筒抜けになった結果、ヴェネツィアに有利な条件に条約が改定されることになります。また、イングランドのエリザベス1世とも交信し、イングランドの利益のために利用されることもありました。

母后としての権力

1595年、息子のメフメト3世が即位すると、サフィエは母后として絶大な権力を握ります。当時のオスマン帝国では、スルタンの兄弟を殺害する慣習がありましたが、メフメト3世の時代以降、この慣習は廃止されました。政治に関心の薄いメフメト3世に代わり、サフィエが政治を主導し、帝国の運営に深く関与しました。

権勢の終焉と暗殺説

1603年、メフメト3世が死去し、孫のアフメト1世が即位すると、サフィエの権勢は徐々に衰えていきます。1618年、サフィエは寝室で不審な死を遂げ、暗殺説が囁かれています。彼女の死は、オスマン帝国の権力闘争の激しさを物語っています。

サフィエ・スルタンは、オスマン帝国の歴史において、その美貌と知性、そして政治手腕で名を残しました。彼女の生涯は、オスマン帝国の栄華と衰退、そしてハレムという特殊な空間における女性の役割を考える上で、重要な手がかりとなります。

彼女は、自身の権力基盤を強化するために、金角湾の一等地に壮麗なモスクの建設を命じました。このモスクは、彼女の権威と威信を示す象徴として、今日までその美しい姿を伝えています。

関連項目

オスマン帝国
ムラト3世
ヌール・バヌ
ラスト・ハーレム

もう一度検索