シネモンド

シネモンド：金沢の小さな映画館が紡ぐ、映画とコミュニティの物語

石川県金沢市香林坊東急スクエアにあるシネモンドは、県内唯一のミニシアターとして、地域に愛される映画館です。91席の小さなスクリーンで、年間約150本の多様な映画を上映し続けています。入口には映画のチラシやポスターが壁一面に飾られ、ロビーには映画関連書籍が置かれた本棚が置かれるなど、映画好きにはたまらない空間が広がっています。

多くの著名人を魅了する、シネモンドの魅力

シネモンドは、その質の高いプログラムと温かい雰囲気から、是枝裕和、黒沢清、河瀬直美といった著名な映画監督や、大森南朋、西島秀俊といった人気俳優など、多くの著名人が訪れる場所として知られています。上映作品に合わせて、監督や俳優による舞台挨拶やトークイベントも頻繁に開催され、観客と映画制作者を繋ぐ重要な役割を果たしています。例えば、『この世界の片隅に』の上映時には、片渕須直監督による舞台挨拶とトークイベントが開催され、8週間という長期に渡る上映は大ヒットを記録しました。

地域に根付いた活動：コミュニティシネマとしての取り組み

シネモンドは単なる映画館ではありません。劇場代表の土肥悦子氏を中心に、地域との連携を積極的に行い、コミュニティシネマとしての役割を担っています。金沢21世紀美術館との協働イベントや、地元商店街との連携など、地域社会に密着した活動が展開されています。さらに、2003年には「金沢コミュニティシネマ推進委員会」を発足させ、「こども映画教室」などを開催。子どもたちに映画制作や映画館体験を通して、映画の楽しさや仕組みを伝えています。この活動は全国のミニシアターからも注目を集めています。しかし、コミュニティシネマとしての行政への働きかけは、結果として実現には至りませんでした。

金沢の映画館の歴史とシネモンドの役割

金沢市における映画の歴史は古く、かつて香林坊には多くの映画館が軒を連ねる「香林坊映画街」が存在していました。しかし、シネコンの台頭や建物の老朽化などにより、多くの映画館が閉館。シネモンドが開館した2000年代初頭には、中心部から映画館が消えつつありました。シネモンドは、そうした状況の中で、地域に唯一残る単館系映画館として、貴重な存在となっています。シネコンでは扱われないような、アート系作品やインディーズ作品などを積極的に上映することで、多様な映画文化を地域に提供し続けています。

シネモンドの運営と独自性

シネモンドは、年間約300本の試写会を鑑賞する土肥悦子氏によって、上映作品が厳選されています。運営は、支配人の上野氏を中心としたスタッフが行っています。座席には、フランスのキネット社製の椅子を採用するなど、快適な鑑賞環境にも配慮。また、年額54,000円で映画が見放題となる会員制度「シネモンド・オフィシャル・サプライヤー・クラブ」も設け、運営の安定化に貢献しています。

シネモンドの誕生：自主上映から常設映画館へ

シネモンドの設立には、劇場代表の土肥悦子氏の情熱が大きく関わっています。東京で映画配給会社に勤務後、金沢に移住した土肥氏は、自身の理想とする映画を上映する映画館がないことに気づき、自主上映会を企画。イラン映画祭を金沢で開催するなど、精力的な活動を行い、その経験と資金を元に、1998年、常設映画館「シネモンド」をオープンさせました。「世界の映画」を意味する館名は、その活動理念を表しています。

未来への展望：挑戦と継続

シネモンドは、デジタルシネマ設備の導入や、料金制度の見直しなど、時代の変化に対応した運営を行ってきました。近年はミニシアター系作品がシネコンでも上映されるようになり、観客数の減少にも直面していますが、地域に根付いた活動と質の高いプログラムによって、その存在感を示し続けています。これからもシネモンドは、金沢の映画文化を支え、地域コミュニティの中心として、その役割を果たし続けるでしょう。

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