しぶちん

『しぶちん』は、著名な作家・山崎豊子による短編小説の作品名を冠した短編集です。この短編集は、1959年2月に中央公論社から初出版され、1965年には新潮文庫版が登場。その後、2005年には新装版が発行され、今日まで愛され続けています。物語は、主に大阪の船場を舞台としており、そこで生きる主人公・山田万治郎の異色な金銭観と節約術を描いています。

「しぶちん」という言葉は、大阪弁で「ケチン坊」を意味し、本作はその名の通り、吝嗇家の主人公が数々の面白いエピソードを通じて、彼の金銭に対する独自の哲学を明らかにしていきます。彼の人生や周囲の人々との関わりを描くことで、読者に笑いだけでなく、少し考えさせられるような要素も取り入れています。

短編集には、以下の作品が収められています。『船場狂い』は1958年8月に『別冊文藝春秋』に掲載され、その他の短編『死亡記事』『持参金』『しぶちん』『遺留品』もそれぞれの雑誌に掲載され、その後この短編集に収録されています。テレビドラマ化もされており、特に『船場狂い』や『しぶちん』は、さまざまな枠で放送されました。

具体的には、KRテレビの『サンヨーテレビ劇場』として1959年3月から放送されており、全4回が三洋電機の一社提供で制作されています。このシリーズでは、名女優・森光子が全4回出演しており、多くの視聴者に親しまれる番組となりました。また、NHK文芸劇場枠で放送された「しぶちん」は1962年に放映され、全1回で多々良純が主演を務めました。さらに、NETテレビのポーラ名作劇場では、1963年に『船場ぐるい』が放送されました。

興味深い点として、本短編集に収められている短編の中で、ただ一つ「死亡記事」だけが映像化されていないという事実があります。この作品群は、テレビドラマや映画など多岐にわたって取り上げられているにもかかわらず、特定の短編が独特の立ち位置にあることがわかります。

『しぶちん』の出版経歴は多岐にわたります。初版は1959年2月に中央公論社から発売され、その後、1965年に新潮社から文庫版がリリースされ、活字サイズを見直した新装版が2005年に登場しました。さらに全集としても収められており、1985年に『山崎豊子全作品』第1巻、2003年には『山崎豊子全集』第1巻が出版され、様々な短編が再収録されています。

このように、山崎豊子の『しぶちん』は、金銭感覚や人間関係をテーマにした深い作品であり、多くのメディアでの展開により、世代を超えて多くの人々に親しまれています。

もう一度検索