シャトル外交

シャトル外交とは

シャトル外交とは、紛争当事国同士が直接対話を持たない状況下で、第三者が両者の間を頻繁に往来し、仲介役を務める外交手法のことです。その様子が、まるで定期的に往復するシャトル便に似ていることから、この名が付けられました。

シャトル外交の起源

この言葉が初めて使われたのは、1973年の第四次中東戦争後のことです。当時のアメリカ合衆国国務長官であったヘンリー・キッシンジャー氏が、アラブ諸国とイスラエルの調停のために、双方の国々を精力的に訪問したことがきっかけでした。

シャトル外交の特徴

シャトル外交は、紛争当事国の一方または双方が、相手国の存在を認めない、あるいは交渉を拒否している状況で、しばしば用いられます。第三者が双方の意向を伝え、妥協点を探ることで、事態の打開を目指します。また、当事者間の直接交渉が困難な場合や、斡旋が必要な場合にも、シャトル外交が有効な手段となります。

シャトル外交の例

「シャトル外交」という言葉が生まれる以前から、似たような行為は行われていました。1919年のパリ講和会議において、イタリアが1915年のロンドン条約で約束された民族統一主義に基づく領土主張（いわゆる未回収のイタリア）が認められないことに抗議して会議から脱退しました。アメリカ代表団のエドワード・M・ハウスは、イタリアと、領土主張の相手国であるユーゴスラビアとの対立を解決するため、別の部屋にいる両国の代表団と話し合って、両国の妥協案を仲介しようと試みました。

キッシンジャー氏は、ニクソン政権およびフォード政権下（1969年～1977年）で、中東地域においてシャトル外交を積極的に展開しました。その結果、1975年のシナイ暫定協定や、1974年のゴラン高原に関するイスラエルとシリアの合意が実現しました。この言葉が広く知られるようになったのは、キッシンジャー氏が国務長官を務めていた時期と重なります。

トルコは、イスラエルとイスラム諸国との間でシャトル外交を行ってきました。トルコはイスラム世界におけるイスラエルの最も近い同盟国であり、イスラム教徒が国民の大多数を占めることからイスラム諸国（特にトルコとイスラエルの両方に接するシリア）はトルコには快く従いました。2008年のロシアとジョージアの戦争でも、トルコが仲介を行いました。

1982年のフォークランド[[紛争]]では、当時のアメリカ国務長官アレクサンダー・ヘイグ氏が、イギリスとアルゼンチンの仲介のためにシャトル外交を展開しました。

フランス大統領エマニュエル・マクロンは、ロシアとウクライナの間でシャトル外交を行ったが、2022年[[ロシアのウクライナ侵攻]]を防ぐことはできませんでした。

日本における「シャトル外交」

日本語においては、「シャトル外交」という言葉は、本項で解説した意味とは異なり、「二国間の首脳同士が定期的に相互訪問を行う」という意味で使用されることがあります。例えば、日本と韓国の首脳が年に1回相互訪問を行う「日韓シャトル外交」が、この意味で用いられています。日韓関係の文脈においては、単に「シャトル外交」と呼ばれることもあります。

まとめ

シャトル外交は、紛争解決のための重要な外交手段の一つです。第三者の仲介によって、当事者間の対立を緩和し、和平への道筋をつけることが期待されます。ただし、日本語においては異なる意味で使用される場合もあるため、文脈に注意する必要があります。

関連項目

* トラック2外交

もう一度検索