スカッド

スカッド（Scud）について

スカッド（Scud）は、ソビエト連邦において開発された弾道ミサイルで、その初期モデルはR-11（SS-1B スカッドA）として知られています。このミサイルは、1940年代にドイツが開発したV-2ロケットを基にしたものであり、1950年代初頭にOKB-1（後のコロリョフ設計局）によって開発が始まりました。1957年にはソ連陸軍に正式に配備され、その後も様々な改良型が誕生しました。

スカッドの発展

スカッドシリーズは、初期のR-11に続き、より高度なR-17（SS-1C スカッドB）が開発され、射程が延び、多様な攻撃任務を担うようになりました。特に、スカッドは敵の重要施設や軍事拠点を狙うための武器として重視されていました。また、ソ連海軍向けに開発された「エルブルス-M」という艦対地ミサイルも存在しますが、より重要なプロジェクトがあったため計画は中止になりました。

1980年代には、スカッドの最終型であるスカッドDが登場し、目標照合用レーダーを搭載したことで精度が大幅に向上しました。このように、スカッドは技術的な進化を遂げてきましたが、1980年代には新型ミサイルに置き換えられ、旧式化していきました。それでも、旧東側諸国や中東の一部では現在も使用されており、その存在感は消えていません。

構造と機動性

スカッドミサイルは、機動性を考慮し、Transporter Erector Launcher（TEL）という大型車両に搭載されて移動します。最初は装軌式でしたが、その後、装輪式のMAZ-543トラックが一般的になりました。このTELは発射台の役割も果たし、発射前にミサイルを立てることで、迅速な発射が可能となります。この点は、他の国の弾道ミサイルにも影響を与えました。

使用史と国際影響

冷戦時代、ソ連は友好国にスカッドBを輸出し、その後も使用が広まりました。スカッドが初めて実戦使用されたのは1973年の第四次中東戦争で、エジプトがイスラエルに対して発射しました。その後、エジプトはスカッドを北朝鮮や中国に渡し、これらの国でも改良型が開発されました。

特に北朝鮮は、スカッドを元にしたノドンというミサイルを開発し、射程を拡大しました。さらに、イランやパキスタンにもスカッドを輸出し、これらの国々もスカッド技術を基にしたミサイルを開発しました。1986年にリビアがアメリカに対し報復としてスカッドを発射した事件や、イラン・イラク戦争での大規模な使用もありました。

技術的側面と性能

スカッドは短距離弾道ミサイルに分類される1段式の常温保存液体燃料ロケットです。発射前に垂直に設置し、燃料を注入、目標設定を行います。この準備には一定の時間がかかるため、発見された場合の脆弱性がありますが、機動発射機として移動することにより、位置特定を困難にしています。発射後は高度100kmに達し、ロケットモーターが作動し、弾道を描いて飛行します。通常のミサイルと異なり、スカッドDでは終末誘導機能も付加されていますが、基本的にロケットモーターと弾頭は一体となっており、分離しない仕組みです。

弾頭には通常爆薬のほかに核や化学兵器、生物兵器なども搭載可能であり、そのバリエーションを持つことが特徴です。このような多様性が、今日の国際情勢においても重要な要素となっています。

結論

スカッドはその歴史を通じて、様々な国家と軍事紛争に影響を与え続けてきました。その構造や機動性、多様な弾頭選択肢が、今後も戦略的に重要な役割を果たすことが予想されます。

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