ステディカム

ステディカムとは

ステディカム（Steadicam）は、カメラマンがカメラを持って走ったり、車に載せて移動する際に発生する映像のブレや振動を軽減することを目的としたカメラスタビライザーです。この革新的な装置は、映画やテレビドラマ、スポーツ中継、観光映像など、多くの撮影シーンで利用されています。従来は、カメラをレール上の台車やクレーンに載せる大掛かりな方法が必要でしたが、ステディカムによって手持ちでもスムーズな移動映像が製作可能となり、撮影技術が飛躍的に進化しました。

構造と機能

ステディカムは、主にカメラを乗せる「スレッド」、そのスレッドを支える「アーム」、そしてアームを接続するカメラマンのための「ベスト」の三つの部分から成り立っています。スレッド部分には「ジンバル」という水平を保つための装置が取り付けてあり、上にはカメラ、下にはカウンターバランスとしてバッテリーやモニターが装備されます。アームは内部にバネやプーリーを有し、歩行時に生じる上下の振動を吸収することができます。このアームは、腹部に取り付けられたソケットを使用して、カメラマンの利き手や撮影シチュエーションに応じて左右に調節することができます。

「ステディカム」という言葉は、「安定した」を意味する「ステディー（Steady）」と「カメラ（Camera）」の合成語で、アメリカのティッフェン社によって商標登録されています。これに対して、他のメーカーはカメラスタビライザーや防振装置など、異なる名前で呼ぶことになります。

開発の歴史

この技術は1972年にアメリカの撮影監督で技術者のギャレット・ブラウンによって開発され、当初は「ブラウン・スタビライザー」と呼ばれていました。1974年にシネマ・プロダクツ社に権利が譲渡され、新たに「ステディカム」という名称が与えられました。シネマ・プロダクツ社は2000年に倒産しましたが、ステディカムに関する技術と権利はティッフェン社に引き継がれ、商標登録が行われました。2005年にはギャレット・ブラウンがアカデミー賞を受賞しており、同社は今も彼と連携して新たなモデルの開発に取り組んでいます。

近年では、ギャレット・ブラウンが関与した「Steadicam Volt」という新しいシステムも登場しました。これは、初めて電子制御を導入したステディカムの一種で、水平を保つ機能が強化されています。

映画とテレビドラマでの活用

ステディカムは様々な映画やテレビ番組でその効果を発揮してきました。1976年にハル・アシュビー監督の作品で初めて使用された後、『ロッキー』や『シャイニング』などの名作でのシーンにも多く使われています。また、NBCの『ザ・ホワイトハウス』や『ER』シリーズなど、テレビドラマにおいても多様に利用されています。日本では、NHKの『世界ふれあい街歩き』や、フジテレビの『京都・町歩き』などでその滑らかな映像が活用されています。ステディカムは時にはアクションシーンや緊迫した状況の演出にも利用され、視覚的なインパクトを与えています。

現在の展開と技術

現在、ステディカムは使用するカメラのサイズに応じて大きさが異なるモデルが存在します。大型の「ウルトラ2」から、ハンディカメラ向けの「パイロット」、そして小型ビデオカメラ用の「マーリン」まで、多様な選択肢があります。各モデルはモジュール化されていて、パーツの交換やアップグレードが可能です。また最近では、ARRIが開発したTRINITYのような新しいハイブリットスタビライザーも市場に登場しており、ステディカムとは異なる技術革新が進んでいます。これにより、今後も撮影スタイルの変化に対応可能な動画制作が期待されます。

もう一度検索