スローシティ

スローシティ（Città Slow）は、イタリア発祥のスローフード運動、スローライフ運動を背景に生まれた、地域文化を顕彰する活動です。この運動は、単にのんびりとした生活を送ることを目的とするのではなく、地域の食や農産物、伝統的な生活文化、歴史、そして豊かな自然環境を大切にし、それらが持つ個性や多様性を尊重した、持続可能な新しいまちづくりを目指すものです。

2017年12月時点で、スローシティはイタリアをはじめとするヨーロッパを中心に、世界30か国、236都市が加盟する国際的な運動へと発展しています。この運動のシンボルマークには、ゆっくりと進むカタツムリが採用されており、その象徴的な動きは、時間に追われることなく、その土地の文化や歴史をじっくりと味わうことの大切さを物語っています。

日本国内では、宮城県の気仙沼市と、群馬県の前橋市の一部がスローシティに加盟しています。これは、日本の地域社会においても、スローシティの理念が共感され、実践されている証拠と言えるでしょう。

加盟条件

スローシティへの加盟は、単に希望するだけでできるものではありません。加盟に際しては、厳しい審査基準が設けられており、その数は55にも及びます。主な条件としては、人口が5万人未満であることが挙げられ、その他にも、有機農業の推進や食育の実践など、地域が持続可能な活動を積極的に行っていることが求められます。また、加盟後も5年ごとに実態調査が行われ、スローシティとしての基準を満たし続けているかどうかが確認されます。これは、スローシティ運動が一時的なブームではなく、長期的な視点を持って、地域文化の保護と持続的な発展を目指していることの表れです。

現状と課題

スローシティ運動は、多くの地域に良い影響を与えている一方で、新たな課題も生まれています。それは、観光化による喧噪と、文化の商業化・俗化の波です。例えば、韓国の全州韓屋村では、観光客の増加に伴い、本来の落ち着いた雰囲気が失われつつあり、そのあまりの騒がしさに訪問者が辟易する状況も見られるようです。このままの状態が改善されなければ、スローシティとしての登録更新が危ぶまれる可能性も指摘されています。

スローシティ運動は、地域文化の保護と持続的な発展を目指す重要な取り組みですが、その目的を達成するためには、観光客の受け入れ方や、地域文化の商業化に対する適切な対策が不可欠です。地域住民と観光客が互いに尊重し、地域文化を共に守り、育んでいく姿勢が、スローシティの理念を真に実現する鍵となるでしょう。

関連情報

風土
地域コミュニティ
世界で最も美しい村
エコツーリズム

外部リンク

公式ウェブサイト（英語）
気仙沼市のアーカイブリンクを記載'>気仙沼市 - ウェイバックマシン（2016年3月4日アーカイブ分）

もう一度検索