ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。

『ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。』

辻村深月の小説『ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。』は、女性に特有の社会的な格差や人間関係の重圧をテーマにした作品です。この作品は、著者が約3年ぶりに発表したもので、山梨県を舞台に、30歳前後の女性たちの“息苦しさ”を描いています。また、この小説は第142回直木賞及び第31回吉川英治文学新人賞の候補作としても注目されました。

概要

この物語は、著者の故郷である山梨を背景に、女性たちが抱える格差やそれに起因する苦悩を探ります。具体的な描写を避けることで、読者は自分の周囲の友人たちの姿を重ね合わせやすくなっています。このような描写スタイルにより、各キャラクターはより親しみを感じさせつつ、物語全体のテーマが引き立てられています。

あらすじ

物語は、幼なじみのチエミが母親を殺して逃げたところから始まります。みずほは自分の母親と仲が良かったはずのチエミが、なぜそのような犯罪を犯すことになったのか理解できずにいます。彼女は自分の母親に対する思いと、地元を捨てて上京しようとする葛藤を抱えつつ、逃げるチエミの行方を追います。ストーリーは、みずほの視点とチエミの視点を交互に描写することで、二人の心理の変化を巧みに描き出しています。

登場人物

• - 神宮司 みずほ: 27歳で夫と出会い、29歳で結婚した雑誌ライター。流産を経験し、子供を持つことができない体質を抱えています。
• - 望月 チエミ: 幼なじみであり、高校まで一緒に過ごした友人。母親との仲は非常に良好だったが、ある日、母を殺す事件を起こし指名手配されてしまう。
• - 古橋 由起子: チエミの同級生で手芸部仲間。
• - 北原 果歩: 友好的で人気のある女子、しかし不倫に悩む一面もある。
• - 飯島 政美: 合コン幹事役を務めていたが、チエミの家族との関係に疑問を抱く。
• - 柿島 大地: みずほのサークル仲間で、山梨勤務の際にチエミと交際していたことがある。
• - 梁川 啓太: みずほの夫。「世界のマツバ」と呼ばれる電機会社で働く。
• - その他の人物: 教師や捜査官など、周囲の関係者が物語の進行に重要な役割を果たしています。

ドラマ化とその顛末

この作品は過去にNHKによってドラマ化の企画が持ち上がりましたが、原作者と講談社が脚本に満足できず、制作は中止されました。NHKは損害賠償を求めて民事裁判を起こしましたが、最終的に講談社が勝訴しています。この一連の騒動は作品に対する理解不足が原因であるとの判断が下されました。

本作を通じて、著者は社会や家族との関係における葛藤や苦悩を巧みに表現し、読者に強いメッセージを届けています。女性の生きづらさやそれを乗り越えようとする姿は、多くの人々に共感を呼び起こすことでしょう。

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