ダウン・バイ・ロー

『ダウン・バイ・ロー』は、孤高の映画監督ジム・ジャームッシュが1986年に発表した、白黒映像が印象的な自主制作映画です。

作品概要

本作は、ジャームッシュ監督の初期を代表する作品の一つとして知られ、シンガーソングライターであるトム・ウェイツが初めて映画で主役を務めた記念すべき一作です。既にいくつかの作品で助演経験があったウェイツは、主演だけでなく、自身の楽曲「ジョッキー・フル・オブ・バーボン」や「タンゴ」を作品に提供し、物語の雰囲気を彩っています。この作品をきっかけに、ウェイツとジャームッシュ監督の緊密な協業関係は継続し、後年の作品でも度々顔を合わせることになります。かつてジャームッシュ監督は、ウェイツ作・主演のミュージカル『フランクス・ワイルド・イヤーズ』（1986年初演）の映画化を計画したものの、資金繰りの問題から実現には至らなかったというエピソードも残されています。

原題である「Down by Law」は、刑務所内で使われるスラングで、「親しい兄弟のような間柄」といった意味合いを持ちます。これは、物語の核心をなす、異なる背景を持つ男たちの奇妙な絆を象徴していると言えるでしょう。

公開に先駆け、1986年5月に開催された第39回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門で先行公開され、高い評価を得ました。日本では同年11月に公開され、字幕は著名な戸田奈津子が手がけています。また、独立系映画を対象とするインディペンデント・スピリット賞では、主要4部門にノミネートされるなど、国内外でその独自性が認められました。

ストーリー

物語の舞台はアメリカ南部の街、ニューオーリンズ。運に見放されたDJのザックは、知人から一時的に車を預かったことが原因となり、身に覚えのない罪を着せられ逮捕されてしまいます。刑務所に収監された彼は、同じ房になった粗暴な男ジャックと反りが合わず、いがみ合う日々を送ります。そこへ、後から入ってきたのは、陽気で騒がしいイタリア人のロベルト。英語が苦手な彼は、辞書を引きながら懸命にコミュニケーションを取ろうとします。対照的な性格を持つザックとジャック、そして異質な存在であるロベルト。全く噛み合わないかに見えた3人ですが、ロベルトが突拍子もない脱獄計画を持ちかけたことから、彼らの運命は思いがけない方向へ向かいます。

彼ら3人は意外にもあっさりと脱獄に成功するものの、刑務所の外は広大な沼地が広がり、すぐに道に迷ってしまいます。延々と続く沼地をあてどなくさまようことになった一行は、苛立ち、ぶつかり合いながらも、奇妙な共同生活を送ることになります。やがて、さまよった末、彼らは偶然見つけた街道沿いの小さなカフェに立ち寄ります。そこでロベルトは、店の女主人ニコレッタと運命的な出会いを果たし、言葉の壁を超えて心を通わせますが…。彼らの旅はどこへ向かうのでしょうか。

キャスト

主要キャストは、主人公のDJザックを演じるトム・ウェイツ、彼と反目し合うチンピラ、ジャックを演じるジョン・ルーリー、そして物語に予測不能なユーモアと温かさをもたらすイタリア人、ロベルトを演じるロベルト・ベニーニです。特に、ロベルト・ベニーニは本作で国際的な注目を集め、その後のキャリアの礎を築きました。カフェの女主人ニコレッタ役には、ベニーニの公私にわたるパートナーであるニコレッタ・ブラスキが配されています。他にも、エレン・バーキンらが脇を固めています。

白黒の映像美、最小限の音楽、そして独特の間の取り方で描かれるこの作品は、3人の男たちの不器用ながらもどこか憎めない人間ドラマであり、ロードムービーでありながらも内省的な雰囲気を湛えています。ユーモアとペーソスが絶妙に織り交ぜられた、ジャームッシュ監督らしいオフビートな魅力に溢れた一作
れた一作
れた作品です。

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