ナガノパープル

ナガノパープル：種なしで皮ごと食べられる黒ぶどう

ナガノパープルは、長野県で開発され2004年に品種登録されたブドウです。大粒で種がなく、皮ごと食べられるという特徴から、市場で人気を集めています。

開発の背景

ブドウは雨に弱く、雨粒が原因で実が割れてしまうことがあります。戦後、日本では「デラウェア」や「キャンベルアーリー」といった、病害に強いアメリカブドウ（ラブルスカ種）が主に栽培されてきました。これらのブドウは独特のフォクシー香を持ち、日本人にとっては「ブドウジュースの風味」として親しまれています。

しかし、アメリカブドウは皮が硬く、生食用として好ましい肉質を持つ品種の多くはヨーロッパブドウ品種（ヴィニフェラ種）です。日本の気候に合ったブドウを作ろうと、農学者の大井上康が長年研究を続け、アメリカブドウとヨーロッパブドウを掛け合わせた「巨峰」が誕生しました。

画期的な品種であった巨峰も、皮が厚く、ヨーロッパブドウのように皮ごと食べることはできません。輸送技術の発達とともに食生活が変化し、「ブドウは食べたいけれど、皮をむいたり種を取ったりするのが面倒」という消費者の声が高まっていました。産地間の競争が激化する中、1998年に公布された種苗法による品種登録制度が、地域の果樹研究を後押ししました。

品種の概要

「ピオーネ」（1973年）、「藤稔」（1985年）に続き、長野県でも「大粒で種なしのオリジナル品種」を目指した育種試験が始まりました。1992年に育成が開始され、2004年に品種登録されたのがナガノパープルです。巨峰とリザマートを両親に持つ大粒の黒系ブドウで、見た目が巨峰に似ているにもかかわらず、種がなく皮ごと食べられる点が大きな特徴です。

長野県外での育成と流出の懸念

ナガノパープルは、その名の通り当初は長野県内でのみ栽培が許可されていました。しかし、品種登録から十数年後の2018年からは、県外での生産も許可されるようになりました。種苗法では、自家増殖した苗木を他人に譲渡することは禁止されていますが、譲渡にあたって認証制度はありません。そのため、個人売買アプリやオークションサイトで匿名で購入できてしまう現状があります。

さらに、長野県が数十ページにわたる栽培マニュアルや良品生産の留意点などを公開しているため、無許可栽培が広まる可能性も指摘されています。ブドウの苗木は見た目では品種を判別しにくく、海外への品種流出も懸念されています。

まとめ

ナガノパープルは、長野県の努力が生んだ画期的なブドウ品種です。しかし、県外での栽培解禁や無許可栽培、海外への流出といった課題も抱えています。これらの課題を解決し、ナガノパープルが今後も高品質なブドウとして維持されるためには、関係者の協力と対策が不可欠です。

脚注

注釈
出典

関連項目

ブドウ品種の一覧
ブドウ
クイーンルージュ

外部リンク

「ナガノパープル誕生の地で「今年はあたり年！」」 JA長野県 長野県農業協同組合中央会

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