ビブリア古書堂の事件手帖

『ビブリア古書堂の事件手帖』

三上延によるライトミステリー小説。越島はぐがイラストを担当し、メディアワークス文庫から刊行されている。

概要

古書に関する深い知識を持つが、極度の人見知りである古本屋の店主、篠川栞子が、客が持ち込む古書にまつわる謎を解いていく日常ミステリー。

作中に登場する古書は実在のもので、作品の影響で売り上げが伸びたり、絶版本が復刊されるなどの現象も起きた。

メディアワークス文庫初のミリオンセラー作品であり、シリーズ累計発行部数は700万部を突破。本屋大賞にもノミネートされた。

小中学生向けに漢字にルビを振った角川つばさ文庫版も刊行されている。

メディアミックスとして、漫画化、テレビドラマ化、映画化もされている。

物語の舞台

物語は2010年8月、神奈川県鎌倉市北鎌倉を舞台に展開する。地名は実在するが、ビブリア古書堂の店舗や登場人物はフィクション。

4巻では、東日本大震災が起きた現実世界と同様の状況が描かれている。

ビブリア古書堂

北鎌倉駅近くの路地に面した古書店。古い木造の建物で、人文科学系の専門書を主に扱うが、漫画や文庫本の棚もある。

ネット通販にも対応しており、売り上げの多くはネット販売によるもの。

店主の栞子の祖父がクリスチャンだったため、ラテン語で聖書を意味する「ビブリア」が店名となっている。

あらすじ

1巻

プロローグ

五浦大輔は、高校時代に「ビブリア古書堂」で働く女性に惹かれる。

第一話夏目漱石『漱石全集・新書版』

読書が苦手な大輔は、祖母の遺品である『漱石全集』のサインについて、入院中の店主・栞子に確認を求める。栞子の博識ぶりに驚きながら、祖母の秘密を知る。栞子に誘われ、古書店で働くことになる。

第二話小山清『落穂拾ひ・聖アンデルセン』

常連客から依頼を受け、女子高生に盗まれた文庫本の回収に協力する。栞子の推理で事件の真相が明らかになり、本好き同士の交流が生まれる。

第三話ヴィノグラードフ・クジミン『論理学入門』

夫婦の絆を描く物語。栞子の指摘により、夫が隠していた秘密が明らかになるが、夫婦の愛情は変わらない。

第四話太宰治『晩年』

栞子所持の貴重な初版本が狙われる。栞子は策略を使い、犯人を追い詰めるが、大輔は栞子から信頼されていないことを知り、退職を申し出る。

エピローグ

退院した栞子は、大輔に一番大事な古書を預けようとする。大輔は断るが、栞子に『晩年』の内容を語ることを約束する。

2巻

プロローグ坂口三千代『クラクラ日記』

栞子が持つ同書の大量の理由に大輔は疑問を抱く。

第一話アントニイ・バージェス『時計じかけのオレンジ』

古書店に届いた問い合わせをきっかけに、女子高生の読書感想文の問題が浮上。栞子は、読書の本質を見抜く。

第二話福田定一『名言随筆サラリーマン』

大輔は高校時代の恋人と再会し、亡父の蔵書を買い取る。栞子の推理で、隠されたサイン本が見つかる。大輔は栞子の母親の失踪を知る。

第三話足塚不二雄『UTOPIA 最後の世界大戦』

コレクターの遺品を巡る物語。栞子は、失踪した母親が情報収集のために用いた手段を明らかにする。栞子は、大輔に自身の過去を語る。

エピローグ坂口三千代『クラクラ日記』

栞子が同じ本を何度も購入する理由を、大輔が解き明かす。

3巻

プロローグ『王さまのみみはロバのみみ』

登場人物の文香は、誰にも言えない秘密をパソコンに日記形式で記録している。

第一話ロバート・F・ヤング『たんぽぽ娘』

古書交換会での騒動を描く。栞子は、盗まれた古書を取り戻し、大輔は智恵子からのクリスマスカードに驚く。

第二話『タヌキとワニと犬が出てくる、絵本みたいなの』

依頼された絵本を探す中で、家族の和解を描く。栞子は、依頼者が求めていた本当の理由を説明する。

第三話宮澤賢治『春と修羅』

栞子は、盗まれた初版本を巡る騒動を解決し、家族の絆を取り戻させる。

エピローグ『王さまのみみはロバのみみ』

文香が秘密を暴露されることを恐れ、日記を母親宛の手紙に書き換える。

4巻

プロローグ

大輔は、栞子の母親から電話を受けるが、その後、母親は姿を消す。

第一章江戸川乱歩『孤島の鬼』

資産家の蔵書を巡り、栞子たちは暗号解読に挑む。

第二章江戸川乱歩『少年探偵団』

過去の因縁が明らかになり、家族の愛憎が描かれる。

第三章江戸川乱歩『押絵と旅する男』

金庫に隠された謎を解き明かし、栞子と大輔は互いの気持ちを確かめ合う。

エピローグ

大輔は、栞子の母親が古書を探すために家を出たことを知る。

5巻

第一話『彷書月刊』

雑誌の買取と再購入を繰り返す女性の謎を追う。

第二話手塚治虫『ブラック・ジャック』

古書に込められた家族の思い出を描く。

第三話寺山修司『われに五月を』

故人の遺した本に隠された想いを明らかにする。

エピローグリチャード・ブローティガン『愛のゆくえ』

栞子と大輔は互いの気持ちを伝えあい、栞子は母親との過去と向き合う。

6巻

第一章『走れメロス』

大輔は、祖父が持っていたという『晩年』の初版を捜す。

第二章『駆込み訴え』

過去の盗難事件を調査し、意外な真相にたどり着く。

第三章『晩年』

『晩年』を巡る争いが激化し、事件の黒幕が明らかになる。

7巻

プロローグ

古書店の後継者を選ぶための試練が描かれる。

第一章「歓び以外の思いは」

過去の因縁が明らかになり、栞子は母親の遺した本を買い戻す。

第三章「覚悟がすべて」

栞子と智恵子は、貴重な古書を巡って競り合う。

エピローグ

栞子と大輔は結婚を約束し、物語は新たな局面を迎える。

登場人物

五浦大輔（ごうらだいすけ）：主人公。活字恐怖症だが、古書店で働く。
篠川栞子（しのかわしおりこ）：もう一人の主人公。古書店の店主で、古書に詳しい。
篠川文香（しのかわあやか）：栞子の妹。明るく社交的な性格。
篠川智恵子（しのかわちえこ）：栞子の母親。失踪中。
志田（しだ）：古書店の常連客。せどり屋。
笠井菊哉（かさいきくや） / 田中敏雄（たなかとしお）：せどり屋。過去の事件に関わる人物。
小菅奈緒（こすがなお）：文香の同級生。古書店の常連客。
坂口昌志（さかぐちまさし）、坂口しのぶ：夫婦で古書店の常連客。
滝野蓮杖（たきのれんじょう）：「滝野ブックス」の息子。
井上太一郎（いのうえたいちろう）：「ヒトリ書房」の店主。

制作背景

作者の三上延は、古書店でのアルバイト経験をもとに執筆。当初は20代男性をターゲットにしていたが、実際は女性読者が多い。

作者は、物語の長さを「あと2～3巻か、もう少し伸びるかも」と語っている。

社会的評価

メディアワークス文庫初のミリオンセラー作品となり、累計発行部数は700万部を突破。本屋大賞にもノミネートされた。

書評雑誌やランキングでも高い評価を得ている。

登場書籍への影響

作中に登場する書籍の売り上げが伸び、絶版となっていたものが復刊されるなど、社会現象を巻き起こした。

既刊一覧

第1シリーズと第2シリーズがあり、オーディオブックも配信されている。

角川つばさ文庫版は、小学生高学年向けに振り仮名と挿絵を追加した新装版。

オフィシャルブック、スピンオフ作品

単行本未収録の作品や、スピンオフ作品も刊行されている。

漫画版

複数の漫画版が連載され、それぞれ異なる作家が作画を担当している。

テレビドラマ

フジテレビ系列の月9枠で連続ドラマ化された。主演は剛力彩芽。

映画

実写映画化され、黒木華と野村周平が主演を務めた。

アニメ映画化も発表されたが、2024年現在も続報がない。

受賞歴

日本アカデミー賞で新人俳優賞を受賞。

スピンオフ作品

小説と漫画のスピンオフ作品も刊行されている。

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