ビルカ

ビルカ：ヴァイキング時代の交易拠点の遺跡

ビルカ（スウェーデン語: Birka）は、現在のスウェーデンの首都ストックホルムから西方へ約29km、メーラレン湖に浮かぶビョルケー島に位置する、ヴァイキング時代の都市遺跡です。この地は、かつて重要な交易拠点として栄え、ヴァイキング時代のスカンディナヴィアにおける生活や文化を知る上で貴重な手がかりを提供しています。

発見と概要

ビルカ遺跡が発見されたのは19世紀のことです。当時から、建築部材、壁土などの建物の遺構、コインや器などの遺物が数多く発見されていました。遺跡があった地域は黒土化（ビエーン）しており、この土壌の特徴から「ビルカ」と名付けられました。

文字記録と交易

ビルカに関する文字記録は、フランク王国の宣教師アンスカルの弟子であるリンベルトが875年以前に著した『聖アンスカル伝』に登場します。この記録によれば、ビルカは「シンク」と呼ばれる民会で自治が行われ、遠くはオランダのドーレスタットなどとも交易を行っていたことがわかります。また、ビルカは要塞を有しており、外敵からの襲来に備えていたことも記されています。

遺跡から出土した豊富な副葬品は、ビルカが広範囲な地域と交易していたことを物語っています。ビルカ周辺には少なくとも2000基の墓があり、そのうち1100基が発掘されています。副葬品は、西ヨーロッパからの輸入品（ラインラントの壷や盃、フランクの宝飾品、アイルランドの青銅製品など）や、ビルカ独自のコインである「ビルカコイン」など多岐にわたります。これらの出土品は9世紀の墓に集中しており、10世紀の墓からは副葬品自体が減少するものの、東方のロシアやヴォルガ川流域からの物産が見つかっています。

ビルカの終焉

10世紀末には、イングランドのエセルレッド王のコインがスカンディナヴィアで広く流通していましたが、ビルカからは発見されていません。このことから、ビルカは980年以前には消滅したと考えられています。

世界遺産登録

ビルカは、以下の世界遺産登録基準を満たし、世界遺産に登録されました。

(3) 現存するまたは消滅した文化的伝統または文明の、唯一のまたは少なくとも稀な証拠。
(4) 人類の歴史上重要な時代を例証する建築様式、建築物群、技術の集積または景観の優れた例。

関連事項

ビルカの女性ヴァイキング戦士
ヴァイキング
ビルカ法

参考文献

「図説ヴァイキングの生活」（原書房、B・アルムグレン著、蔵持不三也訳）

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