ピペット

ピペット：化学実験における精密な液体操作のツール

ピペットは、少量の液体を正確に吸い上げ、移し替えるために使用される実験器具です。スポイトと似た形状ですが、材質や精度の点で大きく異なります。耐薬品性の高いガラスやプラスチック（HDPEなど）で作られており、正確な計量を目的としたものと、液体の移動を目的としたものの2種類に大別されます。

計量用ピペット：正確な体積測定

ホールピペット、メスピペット、マイクロピペットなどが代表的な計量用ピペットです。

ホールピペット: 特定の体積を正確に測り取るためのピペットです。目盛りの精度が高く、正確な量を必要とする実験に適しています。伝統的には口で吸引する設計でしたが、安全のため、安全ピペッターの使用が推奨されます。
メスピペット: ホールピペットと同様に計量用ですが、目盛りがついており、ホールピペットよりも柔軟な体積調整が可能です。こちらも安全ピペッターの使用が推奨されます。
マイクロピペット: マイクロリットル単位の微量な液体を扱う際に使用されます。生化学実験などで頻繁に使用され、ガラス毛細管式と、ピストンを用いた機械式（手動式と電動式があります）があります。機械式は、ダイヤルで体積を調整でき、使いやすさが特徴です。ギルソン社の「ピペットマン」などが有名です。機械式マイクロピペットは、使い捨てのチップを使用するため、サンプル間のクロスコンタミネーションのリスクを低減できます。

液体移動用ピペット：簡便な液体の移送

駒込ピペットとパスツールピペットが代表的な液体移動用ピペットです。

駒込ピペット: 中央部が膨らんだ形状が特徴です。ゴム球（乳首または乳頭と呼ばれる）で吸引し、液体を移します。比較的安価で、初等教育から研究レベルまで幅広く使用されています。考案者の二木謙三氏と、彼が勤務していた駒込病院にちなんで命名されました。目盛り付きのものもありますが、精度は高くありません。
* パスツールピペット: 極めて少量の液体を移すのに適しています。ガラス管の先端を細く引き伸ばした形状で、安価なため使い捨てにされることも多いです。樹脂製のものもあります。綿栓を用いてフィルターとして使用することも可能です。目盛りがないものは、目印を付けて、注射筒などを用いて計量することもできます。

ピペットの素材と安全性

ピペットの素材は、扱う液体の性質に合わせて選択する必要があります。ガラス製は耐薬品性に優れていますが、破損の危険性があります。一方、プラスチック製は軽量で扱いやすいですが、耐薬品性や耐熱性に劣る場合があります。毒物や腐食性の強い液体を扱う際には、適切な素材のピペットを選択し、安全ピペッターなどの安全器具を使用することが重要です。また、ピペットの使用後は、適切な洗浄と滅菌を行う必要があります。

ピペットの種類と用途のまとめ

様々な種類のピペットが存在し、それぞれに適した用途があります。実験の目的に合わせて適切なピペットを選択することで、実験の精度と安全性を高めることができます。

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