ブレンドモード

ブレンドモード：デジタル画像合成の仕組み

デジタル画像編集やコンピュータグラフィックス（CG）において、ブレンドモード（レイヤー合成モード、描画モードなどとも呼ばれる）は、複数のレイヤーを重ね合わせる際に、それらがどのように合成されるかを決定する重要な設定です。

基本的なブレンドモード

多くのソフトウェアでデフォルトとなるのは「通常」モードです。これは単純に、上のレイヤーが下のレイヤーを完全に覆い隠す合成方法です。しかし、画像編集ソフトには、この通常モード以外にも多数のブレンドモードが用意されており、多彩な表現を可能にしています。

各レイヤーのピクセルは、RGB値（色情報）やアルファ値（透明度）といった数値で表現されます。ブレンドモードは、これらの数値に基づいて、それぞれのピクセルをどのように合成するかを決定します。

以下では、ピクセルの値を0.0（黒）から1.0（白）の範囲に正規化して説明します。

通常（Normal）

上のレイヤーが下のレイヤーを完全に覆い隠す、最も基本的なブレンドモードです。下のレイヤーの色は全く影響しません。数式で表すと以下のようになります。

`f(a, b) = b`

ここで、`a`は下のレイヤーの値、`b`は上のレイヤーの値です。このモードは、1984年に発表されたPorter-Duff合成の「A over B」方式に由来します。アルファ値（透明度）を考慮したアルファブレンドもPorter-Duff合成の一部です。

`f(a, b) = alpha(b, a)`

アルファブレンドでは、上のレイヤーのアルファ値に従って色が透過し、下のレイヤーと合成されます。Porter-Duff合成には他にも様々な方式が存在します。

ディザ合成（Dissolve）

上のレイヤーと下のレイヤーから、それぞれの透明度に応じてランダムにピクセルを選択して合成するモードです。アンチエイリアシングが適用されないため、粗い質感になります。Photoshopでは、疑似ランダムノイズを用いたディザパターンを生成し、ピクセルの表示／非表示を切り替えることでこの効果を実現しています。

乗算（Multiply）とスクリーン（Screen）

乗算とスクリーンは、画像の明度を調整する基本的なブレンドモードです。

乗算（Multiply）

上のレイヤーと下のレイヤーの対応するピクセルの値を乗算します。常に画像を暗くします。数式は以下の通りです。

`f(a, b) = ab`

乗算は対称的な演算で、レイヤーの順序を入れ替えても結果は変わりません。同一の画像を乗算すると、2次曲線またはγ=2のガンマ補正と等価になります。

スクリーン（Screen）

ピクセルの値を反転させて乗算し、その後再び反転させることで、画像を明るくするモードです。数式は以下の通りです。

`f(a, b) = 1 - (1 - a)(1 - b)`

スクリーンも対称的な演算です。

オーバーレイ（Overlay）

乗算とスクリーンを組み合わせたモードです。下のレイヤーの値が0.5より大きければスクリーン、小さければ乗算の効果が適用されます。連続的な変化を保つため、乗算とスクリーンの数式にそれぞれ2を掛けたものとなっています。コントラストを強調する効果があります。

`f(a, b) = {
2ab, (もし a < 0.5だったとき)
1 - 2(1 - a)(1 - b), (そうでなかったとき)
}`

ハードライト（Hard Light）

オーバーレイと似ていますが、下のレイヤーではなく、上のレイヤーの値が0.5より大きいか小さいかで乗算またはスクリーンが適用されます。オーバーレイとレイヤーを入れ替えると同等の結果になります。

ソフトライト（Soft Light）

ハードライトと同様に上のレイヤーの値に基づいて処理されますが、オーバーレイよりも穏やかな効果です。Photoshop、GIMP、W3Cなど、実装方法がいくつか存在し、それぞれ数式が異なります。多くの実装では、γ補正と関連付けられます。

覆い焼き（Dodge）と焼き込み（Burn）

写真現像の暗室技法に由来するブレンドモードです。

覆い焼き（Dodge）

画像を明るくする効果があります。「スクリーン」、「覆い焼きカラー」、「覆い焼きリニア」、「除算」などが含まれます。

焼き込み（Burn）

画像を暗くする効果があります。「乗算」、「焼き込みカラー」、「焼き込みリニア」などが含まれます。

その他のブレンドモード

ビビッドライト、リニアライト、減算、差の絶対値、比較（暗／明）、ブール演算、色相、彩度、輝度など、様々なブレンドモードが存在し、それぞれ特有の効果があります。これらのモードは、単純な算術演算、論理演算、または異なる色空間（HSV、HSL、HCLなど）に基づいて計算されます。

マスキング

上のレイヤーをマスクレイヤーとして使用すると、そのレイヤーのピクセル値に従って下のレイヤーの表示が制御されます。グレースケール画像を用いると、アルファブレンドと同様の効果を得られます。

ブラシツールとブレンドモード

一部のソフトウェアでは、ブラシツールにもブレンドモードを適用できます。レイヤーブレンドと異なり、ストローク後に調整できませんが、レイヤーを複数使わずに様々な効果を適用する際に便利です。

まとめ

ブレンドモードは、デジタル画像編集において重要な役割を果たします。様々なモードを理解し使いこなすことで、より高度な画像編集が可能になります。

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