ベルクホーフ

ベルクホーフについて

ベルクホーフ（独: Berghof）は、ドイツ南東部バイエルン州の美しい地域、ベルヒテスガーデン近くのオーバーザルツベルクに築かれた、ナチス・ドイツの総統アドルフ・ヒトラーの山荘です。ベルクホーフは、第二次世界大戦中にヒトラーが多くの時間を過ごした場所の一つであり、総統大本営の一部として機能していました。

歴史的背景

ベルクホーフは、1935年に再建と拡張が行われ、この時期から約10年間、ヒトラーの主要な住居の一つとなりました。しかし、1945年の4月、イギリス空軍の空襲によって大きな損害を受け、5月には武装親衛隊によって火を放たれ、大炎上しました。その後、連合軍による略奪が続き、長らく放置されることとなりました。

1952年4月30日、ヒトラー自決の日に、州政府はネオナチの聖地化を防ぐためにベルクホーフを爆破しました。さらに、1995年から2000年代にかけて、残りの廃墟も撤去されました。現在、跡地は植林され、当時の面影はわずかな石組みの残骸のみとなっていますが、現地にはベルクホーフについての情報が記載されたプレートが立てられています。

ヒトラーの山荘の入手経緯

ヒトラーは1928年の夏、ベルヒテスガーデンにある『ハウス・ヴァッヘンフェルト』（Haus Wachenfeld）という別荘を気に入り、破格の家賃で賃貸契約を結びました。彼はここに姉やその家族を住まわせ、党の幹部会議も頻繁に開催しました。1929年にはこの別荘を4万ライヒスマルクで購入しましたが、購入費用は自著『我が闘争』の印税から賄われました。

建物の構造と維持

小さなシャレー様式のこの山荘は、建築家アロイス・デガノの設計によって1933年に増築されました。また1936年には、母屋が大きく広がり、ガレージも改築されました。この頃から山荘は「ベルクホーフ」と呼ばれるようになり、多くの美しい装飾が施されました。特に大きなテラスとリゾート風のキャンバスのアンブレラが特徴的です。

室内は高級感あふれるスイス松のパネルで飾られ、ヒトラーの書斎には電話の交換台がありました。また、大ホールには赤い大理石の炉棚や高価な家具、略奪した絵画が並べられていました。映画の上映用ブースも設けられており、多くのサポートスタッフによって維持されていました。

ヒトラーは、当初この山荘の管理を異母姉のアンゲラ・ヒトラーに任せていましたが、アンゲラが再婚した後は、ヒトラーの愛人エーファ・ブラウンが山荘の主となりました。ヒトラーは「この場所は私のもの」と語り、自己の名で築いた場所を誇りにしていました。

その他の建造物

ベルクホーフの近くには、ヒトラーが滅多に訪れなかった「鷲の巣」（ケールシュタインハウス）という別荘も存在しました。ナチスのリーダーにとっての巨大的な複合施設であり、周囲には滑走路や警備用の建物もあった為、地域の住民は立ち退きを余儀なくされました。また、ヒトラーの政権下、ベルクホーフは国内外の要人が頻繁に訪れる観光地になりましたが、戦後にはすべての関連施設が完全に撤去されました。

ベルクホーフは不幸な歴史を背負った場所ですが、その跡地は現在、自然が広がり静かな場所となっています。過去を知り、未来へと向かうための重要な記憶として、この地は残り続けています。

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