マイナスイオン

マイナスイオンとは

マイナスイオン（負イオン）とは、大気中に存在する負の電荷を帯びた分子の集合体で、主に空気中の過剰電子によってイオン化した大気分子の陰イオンを指します。大気電気学においては、健康問題に関連して負イオンを指す際に用いられます。家電メーカーでは、空気中の原子や分子が電子を得てマイナスに帯電したものとほぼ共通の定義をしています。

マイナスイオン研究の歴史

20世紀初頭から、空気イオンに関する研究は継続的に行われてきました。日本においては、1990年代後半からマイナスイオンという言葉がメディアに頻繁に登場し、1999年から2003年頃にブームのピークを迎えました。しかし、十分な科学的裏付けがないまま効能を謳うメーカーが多数現れたため、批判も起こりました。ただし、負の大気イオンに関する論文は、2002年までに海外で1470件、日本でも290件存在します。

マイナスイオンの定義

大気電気学におけるイオンは、化学的な定義とは異なります。学術的な定義では、負の大気イオンを指し、英語ではnegative air ionsと表記されます。国内の研究者たちは、学会で負の大気イオンをマイナスイオンと呼んで、生体や生物学的な影響に関する研究発表を行っています。また、物理学分野では、陰イオンの意味でマイナスイオンが使われることもあります。

家電メーカーの定義

2003年時点で、家電メーカー13社は、マイナスイオンを「空気中の原子や分子が電子を得てマイナスに帯電したもの」とほぼ共通して定義していました。

マイナスイオンの実際

学術的な分野以外では、マイナスイオンの定義は曖昧で、統一されていません。懐疑的な立場をとる研究者は、通常の化学におけるイオンは水溶液中の荷電粒子であるのに対し、大気電気学でのイオンの定義とは異なると指摘しています。

マイナスイオンの物質

大気中の負の小イオンの代表的なものとしては、NO3・(HNO3)m・(H2O)n 、HSO4・(HNO3)m・(H2O)nなどがあります。また、コロナ放電によって生成されたマイナスイオンでは、CO4−(H2O)nやO2−(H2O)nなどが推測されていますが、他の物質も候補に挙がっています。水破砕によって発生するものは、ほとんどがO2−(H2O)nと考えられています。

空気イオン研究の起源

1899年にイオンが発見され、1901年には「気体イオン説」が発表されました。その後、空気イオンと健康との関連が研究されるようになり、1910年には人工的に生成された空気イオンが病気の治療に応用されました。

連綿と続く研究

第二次世界大戦によって研究は中断されましたが、1961年には国際空気イオン学会が開催され、研究が再開されました。1976年には、殺菌作用やセロトニン仮説などが発表され、研究は継続的に行われました。しかし、疑似科学の批判者は、マイナスイオンの人体への影響は小さいと指摘しています。

日本でのマイナスイオンブーム

1990年代後半から、マイナスイオン商品は散発的に販売されていましたが、1999年から2002年にかけてテレビ番組で特集されたことで、ブームが始まりました。2002年には流行語にもなりました。

流行の実態

マイナスイオンの健康効果を謳う書籍や広告が多数登場しましたが、これらの効果は客観的に証明されていないものが多くありました。2003年には、家電メーカー14社中8社が自社製品の実験データがあると回答しました。

景品表示法改正による取締り強化

2003年に景品表示法が改正され、商品の表示には合理的な根拠が求められるようになりました。これにより、大手家電メーカーはマイナスイオン商品の宣伝から効果効能の記述を削除し、販売を中止する商品も多数ありました。国民生活センターは、マイナスイオンを謳った商品すべてに科学的な健康効果が実証されているわけではないと報告しました。

マイナスイオン商品

現在でも、マイナスイオンを謳う商品が販売されていますが、その効果には疑問が残ります。一部の大手企業は、名称を変えた商品を販売しています。また、独自の名称のイオン発生機を搭載しているメーカーも多数存在します。

業者が主張するマイナスイオンの効能

業者は、マイナスイオンに精神安定、不眠の改善、アレルギーの抑制、血液浄化などの効果があると主張していますが、これらの効果は科学的に実証されていません。

家電メーカーの研究データ

2003年の調査では、家電メーカーは「脱臭」「保湿」「静電気の抑制」「集塵」などの効果を実験で確認していましたが、健康効果については実証されていません。

シャープによる除菌効果の検証

シャープは、プラズマクラスターという技術で除菌効果があるとしていますが、その効果の実空間での実証は第三者による科学論文としては存在していません。また、消費者庁は、シャープが販売した掃除機について、表示された通りの性能が出なかったとして、不当景品類及び不当表示防止法違反で措置命令を出しました。

マイナスイオン発生器

マイナスイオン発生器には、コロナ放電方式、電子放射方式、プラズマ方式、レナード方式、天然鉱石を用いるものなど様々な種類があります。しかし、効果を疑問視する声も多く、中には放射性同位元素を混入した商品も存在します。

マイナスイオン密度の測定

マイナスイオン密度は、専用の測定器で測定されますが、測定には科学的な知識と技術が必要です。また、測定結果は環境因子の影響を受けるため、信頼性の高いデータを得るためには注意が必要です。

特許庁等の対応

特許庁は、マイナスイオンに関する特許が多いことを指摘していますが、マイナスイオン発生器の効果については、科学的に完全に解明されていない状況下で社会的に注目されてきたと注意を促しています。

東京都生活文化局の対応

東京都生活文化局は、マイナスイオン商品の表示に関する科学的な検証結果を公表し、客観的な実証が認められないと指摘しています。また、景品表示法の遵守を指導しています。

マイナスイオン研究の実態

2002年までに、海外に1470件、日本でも290件の論文が存在しますが、人体への効果については、懐疑的な意見も多くあります。国内の研究発表も、2000年から2004年にかけて増加したものの、2005年以降は激減しています。

医学的実証

代替医療としてマイナスイオン療法が行われている例もありますが、健康保険は適用されません。また、難病が改善したという報告や、季節性情動障害に対する効果を示唆する研究もありますが、科学的な根拠はまだ不十分です。

ニセ科学もしくは未科学とする主張

マイナスイオンを批判する研究者は、その効果は実証されておらず、未科学であると主張しています。また、ドライヤーのサラサラ効果はオゾン水によるものではないかなど、マイナスイオン以外の原理で説明できると指摘しています。

まとめ

マイナスイオンは、20世紀末に健康効果が注目されブームとなりましたが、その効果については科学的な根拠が乏しく、懐疑的な意見も多くあります。現在では、景品表示法の改正により、効果を謳う広告は規制されており、消費者は商品の情報について慎重に判断する必要があります。

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