ランゴリアーズ

ランゴリアーズ（The Langoliers）

スティーブン・キングが1990年に発表した中篇小説で、同年に刊行された短篇集『Four Past Midnight』の一篇として収められている。ホラー作品に分類される本作は、時間の概念を主題の一つに据え、閉鎖空間における人間の心理と超常的な恐怖を描き出す。カリフォルニア州ロサンゼルスを深夜に発ち、マサチューセッツ州ボストンへと向かう旅客機内で発生した不可解な現象を巡る物語である。

あらすじ

深夜便としてロサンゼルス国際空港を飛び立ったアメリカン・プライド航空の旅客機内で、深い眠りについていたわずか10名の乗客を残し、他のすべての搭乗者と彼らが身につけていたものが忽然と消失するという異常事態が発生する。盲目の少女ダイナの鋭い叫び声によって目覚めた生存者たちは、無人となったコックピットを含め、機内の異変に気づき愕然とする。正規の操縦士が不在となった危機的状況の中、偶然にも乗客として乗り合わせていた同航空会社のブライアン機長が、事態収拾のため自ら操縦桿を握る。地上の管制塔との通信が一切繋がらないことから、ブライアンは目的地であるボストンへの飛行を断念し、最も近い空港への緊急着陸を決断する。この決定に対し、ボストンでの重要なビジネスの予定を控えていたビジネスマンのクレイグ・トゥーミーは激しく反発し、他の生存者たちとの間に緊張が生まれる。

様々な困難を乗り越え、旅客機はなんとか無人の空港への着陸に成功する。しかし、そこはまるでゴーストタウンのように静まり返っており、生命の気配が全く感じられない。生存者たちは違和感を覚えつつも、情報収集のため空港施設内を探索する。空港内のあらゆるものが奇妙に澱んでおり、置いてある食物も味がしない、マッチが燃えないといった異常現象が続く。その間にも、フライト中に既に不安定な精神状態を見せていたトゥーミーは、次第に父親の幻影にとらわれ、幼少期に聞かされたとされる、全てを貪り尽くす正体不明の存在「ランゴリアーズ」に対する異常な恐怖心を募らせていく。そして、彼らの閉じ込められたこの場所が、時間の流れから切り離された過去の残滓であり、それを片付けるために迫りくる「何か」が存在することを悟り始める。

メディア展開

本作は、1995年にアメリカのABC放送によってミニシリーズとして映像化された。脚本と監督は、後にキング作品の映画化を複数手掛けることになるトム・ホランドが務めている。原作の持つ閉鎖的な恐怖と超常現象が、テレビドラマならではのスケールで描かれた。日本においては、NHKが1997年12月29日と30日の二夜連続で前後編に分けて放送し、多くの視聴者に衝撃を与えた。2008年10月24日には、『スティーブン・キングのランゴリアーズ』という邦題で日本版DVDが発売されており、このDVDにはNHK放送時の日本語吹替音声が収録されている。

関連性

作品内で描かれる不可解な消失や無人の空間といったモチーフは、現実世界やフィクションにおける幾つかの有名な事例との関連性が指摘されている。例えば、乗組員だけが忽然と姿を消したとされる帆船メアリー・セレスト号の謎（1872年）、コナン・ドイルによるその事件をモチーフにした短篇『J・ハバクック・ジェフソンの遺書』（1884年）などが挙げられる。また、SFアンソロジーシリーズ『トワイライト・ゾーン』の第2シーズン第18話「The Odyssey of Flight 33」（1961年放送）では、時間移動して過去に取り残される航空機のエピソードが描かれており、本作との類似性が指摘されている。キング自身がこれらのエピソードからインスピレーションを得たかは定かではないが、時間の歪みや不可解な消失というテーマは、古くから人々の想像力を掻き立てるものであることを示している。

物語の舞台となる空港は、アメリカ北東部のバンゴー国際空港をモデルにしていると推測される場合がある。

外部リンク

ランゴリアーズ - allcinema (日本語)
The Langoliers - オールムービー (英語)
* The Langoliers - IMDb (英語)

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