ルベン

ルベン：イスラエルの長子であり、その運命

ルベン（ヘブライ語: רְאוּבֵן‎）は、旧約聖書の創世記に登場する人物で、ヤコブとレアの間に生まれた長男です。彼の名前はヘブライ語で「見よ、息子だ」または「その子を見よ」という意味を持ち、誕生を喜んだレアの感情が込められています。ルベンは、後にイスラエル十二部族の一つとなるルベン族の祖となりました。

生涯の出来事

ルベンの生涯は、その複雑な性格と、長子としての立場、そして過ちによって彩られています。

ヨセフの危機とルベンの介入

ルベンは、異母兄弟であるヨセフが自分の夢について語った際、他の兄弟たちがヨセフを妬み、殺そうとした時に、ヨセフを救おうとしました。彼は兄弟たちを説得し、ヨセフを殺すことを思いとどまらせようとしましたが、兄弟たちはルベンのいない間にヨセフをイシュマエル人に売り渡してしまいました。ルベンは、この事実を知ったとき、ヨセフの身を案じ、大変悲しんだとされています。

ベニヤミンを巡る出来事

その後、エジプトで飢饉が起こり、ヤコブの息子たちは食料を求めてエジプトへ行くことになります。その際、末弟のベニヤミンをエジプトに行かせることを父ヤコブが拒んだ時、ルベンは自分の4人の子供のうち2人をヤコブに誓約として差し出しました。これは、ベニヤミンの安全を保証し、エジプトへ行かせるための彼の決意を示すものでした。

長子の特権の喪失

ルベンの生涯において最も重要な出来事の一つは、父ヤコブのそばめであったビルハと姦淫を犯したことです。この行為は、父ヤコブを深く悲しませ、ルベンは長子としての特権を失うことになりました。ヤコブは死の間際に行った遺言で、ルベンが長子としての権利と尊厳を持っていたものの、奔放な性格のためにその地位を失ったと語っています。長子の権利は、最終的にはヨセフに引き継がれることになりました（創世記35:22、49:3）。

聖書におけるルベンの重要性

ルベンは、その複雑な性格と行動を通じて、聖書の中で重要な教訓を提供しています。彼は長子としての責任を負いながらも、過ちを犯し、その結果、長子の特権を失いました。この物語は、人間の弱さ、罪、そしてその結果としての喪失を如実に示しています。

ルベンの物語は、人間の選択とその結果の重大さを教えています。彼の行動は、私たちに自己制御と責任の重要性を考えさせるきっかけとなります。また、彼の悲劇的な運命は、神の正義と恵みの両面を示しており、私たちに深い反省を促すものです。

ルベンは、単なる歴史上の人物としてだけでなく、人間としての弱さと強さ、そして神の摂理を理解するための重要な人物として、聖書の中で記憶されるべき存在です。彼の生涯は、私たち自身の人生における選択と行動について深く考えるための鏡となるでしょう。

参考文献

• - 「新聖書辞典」いのちのことば社、1985年

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