レンチキュラー

レンチキュラーとは、表面に微細な凸レンズが並んだシート（レンチキュラーレンズ）を用いた印刷技術のことです。この技術により、見る角度を変えることで絵柄が変化したり、立体感を感じたりする効果が得られます。数センチ角の小型の印刷物から、ビルの壁面に取り付けられた広告板のような大型のものまで、様々なサイズで活用されています。

レンチキュラーの構造

レンチキュラーは、レンチキュラー画像と呼ばれる特殊な画像と、表面に多数の凸レンズが並んだ透明なプラスチック製のレンチキュラーレンズシートで構成されています。レンチキュラー画像は、複数の画像を細長い短冊状に分割し、それらを交互に並べたものです。この画像を印刷した印刷物の上にレンズシートを貼り合わせるか、レンズシートの裏面に直接画像を印刷することで作成されます。重要なのは、画像の細片ごとに一つの凸レンズが正確に対応するように配置することです。この位置がずれると、期待する効果が得られません。

特に3次元ディスプレイでは、ピクセルの列とレンチキュラーレンズの並びを正確に一致させ、一列ごとに異なる画像を表示させることで立体的な映像を作り出します。

レンチキュラーによる効果

レンチキュラー技術を用いることで、主に以下の3種類の効果を実現できます。

1. 絵柄の変化: 異なる複数の画像を組み合わせることで、見る角度によって絵柄が変化する効果が得られます。これにより、一つの印刷物で複数の異なる情報を表示することができます。
2. アニメーション効果: 少しずつ異なる多数の画像を組み合わせることで、見る人の目の動きに合わせて動画のようなアニメーション効果を生み出すことができます。
3. 3D効果: 左目用と右目用の視差のある2枚の画像（ステレオペア）を組み合わせることで、特別な眼鏡なしに立体感を感じることができます。これは、視差を利用して脳が奥行きを認識する原理に基づいています。

例えば、日本では1960年代に発売されたダッコちゃん人形の目に、この技術が用いられ、角度によってウインクしているように見える効果を出していました。また、2024年に発売されたApple Vision Proでは、装着者の目の映像を表示する外側のディスプレイにレンチキュラーレンズが採用され、より自然な印象を与えるために役立てられています。

レンチキュラーの作成方法

レンチキュラー印刷は、専門のサービスを利用するだけでなく、個人でも作成することができます。複数の画像からレンチキュラー印刷を作成するサービスを提供する企業もあれば、自分でレンチキュラー印刷を作成するためのキットも販売されています。パソコンとこれらのキットを利用すれば、オリジナルなレンチキュラー作品を作成することが可能です。

関連事項

レンチキュラー技術に関連する以下の技術も、立体視や映像表現に関わるものです。

両眼視差: 人間の目が左右に位置しているために生じる視覚の違い。立体視の基礎となる概念。
ステレオグラム: 視差を利用して立体的に見える画像を指す。
ホログラフィー: 光の干渉を利用して立体像を記録・再生する技術。
視差バリア: 左右の目に異なる画像を見せることで立体感を生み出す技術の一つ。

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