一本うどん

一本うどんについて

一本うどん（いっぽんうどん）は、その名の通り、通常のうどんよりもはるかに太く作られた特別なうどんです。元々、江戸時代から伝わるこの料理は、日本各地で愛される存在となっています。

やほきの一本うどん

東京都北区で営業していたうどん専門店「やほき」では、一本うどんが特に人気でした。この店の創業者である村瀬忠太郎は、著書『蕎麦通』の中で、やほきの一本うどんの特徴や製法について詳しく語っています。一本うどんは、一般的なうどんと同じ材料を使いながらも、親指ほどの太さがあり、長さもあるため、丼には一つだけ盛り付けられます。その口当たりは非常に柔らかく、食べる際には適当な長さに箸で切り、温かい汁につけて食べるのが特徴です。また、ご飯の代わりや酒のあてとしても最適とされています。

このうどんの魅力は、切り口がきれいな四角形で、中心までしっかり火が通っているところにあります。その製造には高度な技術が求められ、前日の夕方に生地を打ち、一定の時間茹でた後、蓋をして一晩置くことで、余熱でじっくりと煮込むという工程が行われます。

京都の一本うどん

村瀬の著作の中では、京都や名古屋にも似たような一本うどんが存在するとされます。京都の「たわらや」といううどん店では、北野天満宮近くに店舗を構え、一本うどんを名物料理として提供していました。この店のうどんは、創業時からうどんつゆに漬けられた状態で提供されてきた歴史があります。しかし、戦後の厳しい食糧事情により、一時閉店を余儀なくされ、一本うどんの伝統が消えかけました。1996年には復興され、現在もその名物として続いています。ただし、食べる際には喉に詰まらせる危険があるため、現在では2〜3本に切り分けて提供されています。

文芸に登場する一本うどん

江戸時代の食文化を題材にした池波正太郎の小説にも、一本うどんは頻繁に登場します。代表的な作品として、短編「掻堀のおけい」と「男色一本饂飩」があり、これに登場する豊島屋という店も一本うどんで知られています。このように、一本うどんは多くの文学作品にも取り上げられ、その存在感を示しています。

日本各地のうどん店や製麺業者では、さまざまなスタイルの一本うどんが販売されており、その人気は確固たるものです。日本の伝統や文化を感じられる特別なうどん、それが一本うどんです。

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