三州瓦

三州瓦について

三州瓦（さんしゅうがわら）は、愛知県、旧三河国で生産される粘土瓦の一種で、日本三大瓦の一つとして名を馳せています。現在は西三河が主な生産地ですが、20世紀半ばまでは東三河でも盛んに生産されていました。三州瓦は日本国内の瓦生産において圧倒的なシェアを誇り、年間の生産全体の約60%を占めています。これに関連して、約100社の企業が愛知県陶器瓦工業組合や三州瓦工業協同組合に加盟し、三州瓦の製造に従事しています。また、この地域で鬼瓦を制作する職人達は「鬼師」と呼ばれ、2021年時点で約70〜80人が在籍し、そのうちの半数近くが三州瓦の地域で活動しています。

歴史

三州瓦の歴史は古く、奈良時代から平安時代には既に当地で焼かれていたことが発掘調査により確認されています。鎌倉時代に入ると、伊良湖岬で焼かれた瓦が重要な寺院建築に使用され、室町時代には城郭の建設が進む中で、三河での瓦生産が急増しました。江戸時代には、需要の高まりから江戸で使用する瓦の生産が西三河で始まり、東三河でも瓦町と呼ばれる地域が発展しました。明治時代に入ると、一般家庭でも瓦葺きの屋根が普及し、瓦の需要が急増しました。

1909年時点では、瓦製造業者は約350社に達していました。20世紀に入ると、多様な瓦のスタイルが登場し、特に強度や耐寒性が向上した瓦が普及しました。1951年にはトンネル窯が導入され、1963年には生産量のピークを迎え、全国シェアは大幅に増加しました。

近年も三州瓦の需要は高く、1992年には函館市の旧イギリス領事館の改修でも使われ、同年に開館した高浜市やきものの里かわら美術館は、瓦をテーマにした日本唯一の美術館です。さらに、2006年には地域団体商標として認定されるなど、三州瓦の価値はますます高まっています。

原料と生産地

高浜市や碧南市は三州瓦の中心的な生産エリアで、当地の粘土は矢作川の流域から発掘されるもので、陶磁器に適した質の良い原料が豊富に存在します。三州瓦の特徴は、カオリンが31%を占めるきめ細かい粘土です。この高品質な粘土が三州瓦の美しさと耐久性を支えています。しかし、1990年代には生産量が増える一方で、原料粘土の消費が加速し、供給が不足するジレンマが生まれました。このため、新たな供給源の開発が行われ、周辺地域からの粘土採掘も進められています。

瓦の種類

三州瓦にはいくつかの種類があります。いぶし瓦は、明治時代まで最も大量に生産され、銀灰色の外観が特徴です。塩焼瓦は赤瓦とも呼ばれ、赤褐色が美しいです。釉薬瓦は、平板型瓦の基礎が作られ、色彩やデザインも多様化しました。これらの瓦は日本の市場で広く受け入れられ、今でも人気のあるスタイルとなっています。

まとめ

三州瓦は長い歴史を持ち、愛知県の地域文化の重要な一部を成しています。その品質の高さと美しさ、そして職人技が育んだ多様なデザインは、地域の誇りであると同時に、現代においても需要が高まっています。

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