三月ウサギ

三月ウサギのキャラクター

三月ウサギ（さんがつウサギ、英語: March Hare）は、ルイス・キャロルの人気児童文学『不思議の国のアリス』に登場する愛らしくも奇妙なキャラクターである。このキャラクターは、ノウサギを擬人化したもので、帽子屋や眠りネズミとともに「狂ったお茶会」を開催し、アリスに対してさまざまな不思議な言動を展開する。

物語における登場

三月ウサギは、第6章「豚とコショウ」で初めて言及され、チェシャ猫によって「帽子屋と共に気が狂っている」と説明される。アリスは当初、三月は現在5月であるため、これほど気が狂っているわけではないと考え、三月ウサギの家に向かうことを決意する。しかし、次の章「狂ったお茶会」では、終わりのないお茶会が開かれ、そこで三月ウサギはアリスを翻弄し続ける。

お茶会において、三月ウサギは現実には存在しないワインを勧めたり、帽子屋や眠りネズミの会話に間を入れたりするなど、アリスをいらだたせる行動をとる。物語の終盤では、彼と帽子屋は眠りネズミをティーポットに押し込もうとするシーンがあり、それがさらに彼らの狂気を強調している。第11章「誰がタルトを盗んだ？」では、裁判に再び登場し、ズレた証言を繰り返す姿が見られる。

キャラクターの背景

三月ウサギの名前は、「三月のウサギのように気が狂っている」という表現から来ている。この表現は、3月の繁殖期に雄のノウサギが見せる落ち着かない行動への言及であるが、実際にはノウサギの繁殖期は8か月続くことが知られている。このことについて、科学者たちは「沼のウサギのように狂った」という言い回しが「三月」という言葉に変わったと指摘している。

テニエルのイラスト

挿絵の名手、ジョン・テニエルによって描かれた三月ウサギは、蝶ネクタイやチョッキ、そして麦藁の頭飾りを身に着けた姿で表現されている。この藁は、当時の風刺漫画において狂気を示す手法として使われていた。また、三月ウサギは数々の挿絵に登場するが、その特徴的な描写は時代とともに理解されにくくなり、特にディズニーのアニメーション版『ふしぎの国のアリス』ではもっと抽象的なイメージに変更されている。

続編での登場

『不思議の国のアリス』の続編である『鏡の国のアリス』では、三月ウサギは「ヘイヤ」という名前で再登場する。彼は帽子屋と共に「白の王」の使者として描かれ、王冠を巡る争いを王に伝える役割を果たす。このキャラクターたちの姿勢は「アングロサクソン風姿勢」と呼ばれる奇妙なものになっており、アリスは彼らとの再会に気づかない。

文化的影響

三月ウサギは、テニエルによる挿絵がパイオニア的な意味を持ち、後世に多大な影響を与えた。アメリカの作家、ジョン・ディクスン・カーの作品にも「三月ウサギ」の名が登場し、広く知られる存在となった。また、萩尾望都の漫画でも三月ウサギという名前が概念として使われ、多岐にわたってキャラクターの影響が見られる。

このように、三月ウサギは『不思議の国のアリス』において誇張された個性と独特の行動で物語に色を添え、文学やアートにおいて今なお愛され続けているキャラクターである。

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