三郎丸蒸留所

三郎丸蒸留所

三郎丸蒸留所（さぶろうまるじょうりゅうじょ）は、富山県砺波市三郎丸に位置するジャパニーズ・ウイスキーの蒸留所で、北陸最古のウイスキー蒸留施設として知られています。この蒸留所は、創業以来、一貫してピーテッド麦芽を使用したウイスキー作りを続け、また、世界で初めて鋳造製ポットスチル「ZEMON」を実用化したことで注目を集めています。

歴史

三郎丸蒸留所の歴史は1952年に始まります。若鶴酒造の2代目社長である稲垣小太郎の手により、ウイスキーの製造免許が取得されました。元々日本酒の酒蔵を運営していた若鶴酒造は、第二次世界大戦後の米不足の影響を受け、米以外の原料で酒を作る方法を模索し、1947年に若鶴発酵研究所を設立しました。1950年には雑酒の製造免許を取得し、翌1952年にウイスキーの製造免許が取得されました。

1953年、同社は「サンシャインウイスキー」を市場に投入しますが、流通状況は芳しくありませんでした。1960年代初頭には年間わずか140本を売り上げる状況が続いており、1983年の地ウイスキーブームの際も3000本程度の販売に留まりました。その後、ウイスキーの製造は2000年代の中ごろに中断されますが、2015年に5代目社長の稲垣貴彦が富山に戻り、2016年にウイスキー製造の復活を宣言しました。

復活への道

2016年、稲垣氏はクラウドファンディングによって得た資金を利用して、老朽化した設備を刷新。2017年7月にウイスキーづくりを再開しました。設備改修に伴い、銅製ポットスチルやマッシュタンなどの新しい設備を導入し、2020年からはアイラ島産のピートを使用した麦芽を取り入れました。さらに、2020年には初めてのシングルモルトウイスキー「三郎丸0 THE FOOL」を発売し、『駒田蒸留所へようこそ』というアニメ映画にも蒸留所が登場しました。

製造プロセス

三郎丸では、一度の仕込みに1トンの麦芽を使用します。特に、ピーテッド麦芽を使用することで香り豊かなウイスキーを製造しています。仕込み水には庄川の地下水が使用され、仕込みや発酵の工程は工夫されています。また、「ZEMON」と呼ばれる2基のポットスチルを使っており、これは世界初の鋳銅製のスチルとして注目されています。

熟成と製品

ウイスキーの熟成には、バーボン樽やシェリー樽、富山県産のミズナラ樽を使用しており、複数の熟成環境を用いることで多彩な原酒作りを行っています。主力製品にはブレンデッドウイスキーがあり、限定商品として「三郎丸1960」などもリリースされています。特に「三郎丸1960」は55年熟成された貴重な一品で、その珍しさから高い評価を受けています。

評価と受賞歴

近年、三郎丸のウイスキーは国内外で高く評価され、2023年には「THE SUN 2022」がWorld Whisky Awardsで金賞を受賞しました。さらに、見学ツアーや地域資源を活かした観光振興にも積極的に取り組んでいます。

以上のように、三郎丸蒸留所は歴史ある蒸留所であり、革新を続けながら日本のウイスキー文化に貢献している施設と言えるでしょう。

もう一度検索