世代間格差

世代間格差について

世代間格差（せだいかんかくさ、英: intergenerational inequity）は、特定の世代が政府や自治体から受ける年金や社会福祉などのサービスと、その世代が負担する税金や借金の額の不均衡から生じる問題です。この格差の分析手法の一つに、世代ごとの受益と負担を計算する「世代会計」があり、アメリカの財政学者ローレンス・コトリコフによって提唱されました。特に日本においては、少子高齢化が進んでおり、社会的な懸念が高まっています。

日本における高齢化の現状

日本は高齢化が急速に進行している国の一つであり、2012年には有権者の約30%が65歳以上となり、2050年代にはその割合が45%に達する見込みです。この状況により、若年層の投票率が低く、高齢者に有利な政策が進みやすくなっています。結果、世代間の格差が拡大する懸念が指摘されています。

社会保障制度とその影響

日本の国民年金制度は、現役世代が給付に必要な費用を負担する「賦課方式」を採用しています。しかし、少子高齢化が進行する中で、受給者の割合が高くなると現役世代の負担が増大し、実際に受けられる年金が減少する可能性があります。試算によると、1940年生まれの世代と2010年生まれの世代では、受益と負担の差が約6000万円にもなるという見解が示されています。

経済的な影響

2007年以降の円高とデフレーションは、現役世代にとって厳しい状況を生み出しました。一方で、この経済情勢は年金生活者には有利に働きました。政府は高齢者層の支持を失うことを恐れ、十分な対策を講じることができずにいます。

雇用状況と世代間格差

日本の雇用慣行には、新卒一括採用があります。この制度は、新卒者が安定した仕事を得られなければ、その後のキャリアにも大きな影響を与える枠組みです。不況に伴う採用削減は、多くの若者に不利益をもたらしています。また、終身雇用制度が存続する中で、企業は新規の採用を非正規雇用で賄っている現状があります。OECDは、高齢化の影響で賃金構造にゆがみが生じていることを指摘しています。

環境の世代間格差

世代間格差は環境問題と関連して語られることもあります。新しい世代は、気候変動による異常気象の影響をより多く受ける可能性が高いとされています。たとえば、2020年生まれの子供たちは、1960年生まれの世代と比べて、寿命の中で2～7倍の異常気象を経験することになると言われています。高齢者層が環境問題に対する関心が薄いため、世代間の不均衡がますます広がることが懸念されています。

気候変動訴訟と世代間の不公平

アメリカでは、若者の環境活動家が政府を相手取って気候変動に関する訴訟を起こしました。その中で、若い世代が気候変動への対処に多くのコストを負担させられていることが問題視されています。この訴訟が示すように、将来世代の権利が侵害されているという考え方が根底にあります。

持続可能性の視点

世代間の公平性を向上させるためには、持続可能性の視点が重要です。「弱い持続可能性」とは、将来世代の環境損失が経済的進歩によって相殺されることを意味します。一方で、「強い持続可能性」は、経済の進展があったとしても、環境の劣化は許されないとする考え方です。これについては、異なる立場から様々な意見が存在し、議論を呼んでいます。

まとめ

世代間格差は、経済や環境問題を含めた多面的な問題であり、解決には多くの議論と取り組みが必要です。各世代が公平に負担や受益を分かち合える社会を目指すことが、未来への持続可能な道を築くために重要です。

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