並木藪蕎麦

並木藪蕎麦：浅草に息づく蕎麦の歴史

東京都台東区雷門に位置する並木藪蕎麦は、大正2年(1913年)創業の老舗蕎麦店です。神田藪蕎麦の初代、堀田七兵衛氏の三男である堀田勝三氏が創業したこの店は、数々の歴史と伝統を受け継ぎ、現在もその味を守り続けています。

創業から現在まで

並木藪蕎麦の歴史は、神田藪蕎麦、そして既に閉店した池の端藪蕎麦と共に「藪御三家」として知られる歴史ある蕎麦店の系譜に深く関わっています。勝三氏は当初、京橋で蕎麦店を営んでいましたが、地主からの土地明け渡し要求を受け、浅草並木町に移転。それが現在の並木藪蕎麦となります。地元の人々からは「雷門の藪」と呼ばれるほど親しまれ、その存在感は揺るぎません。

並木藪蕎麦と「藪」の系譜

「藪」の名を冠する蕎麦店は、江戸時代から存在していました。享保20年(1735年)の『続江戸砂子温故名跡志』には、鬼子母神の門前や藪の中に蕎麦屋があったことが記されており、その歴史の長さが伺えます。

天保4年(1833年)の『慊堂日暦』には、団子坂の「蔦屋」という蕎麦屋が登場します。この「蔦屋」は、後に神田藪蕎麦の初代となる堀田七兵衛氏が修業した店であり、その歴史は明治時代まで続きます。明治13年(1880年)、七兵衛氏は神田連雀町の「蔦屋」の支店を譲り受け、「団子坂支店・藪蕎麦」としました。この「蔦屋」は、周辺にあった竹藪から「藪蕎麦」と呼ばれていたとされています。

明治39年(1906年)に「団子坂藪蕎麦・蔦屋」が廃業したのち、勝三氏は、その流れを汲む「藪金」という蕎麦屋を受け継ぎ、並木藪蕎麦として新たな歴史を刻み始めます。

並木藪蕎麦の伝統と進化

並木藪蕎麦は、長きに渡り受け継がれてきた伝統的な蕎麦つくりを大切にしながら、時代に合わせて進化を続けてきました。初代勝三氏、二代目平七郎氏、そして三代目浩二氏と、それぞれの時代で蕎麦への情熱と技を磨き上げ、その味を守り続けています。二代目の平七郎氏は、東京の蕎麦屋組合の講師を務めるなど、蕎麦業界の発展にも貢献しました。

現在でも、並木藪蕎麦では、厳選された蕎麦粉とこだわりのつゆを用いた蕎麦を提供しています。その味は、多くの人々を魅了し続け、浅草のランドマークとして存在感を示しています。

アクセス

並木藪蕎麦は、浅草駅から徒歩圏内に位置しており、アクセスも良好です。東武スカイツリーライン、都営浅草線、東京メトロ銀座線を利用して容易に訪れることができます。

まとめ

並木藪蕎麦は、単なる蕎麦店ではありません。江戸時代から続く「藪」の系譜を受け継ぎ、伝統を守りつつ進化を続ける、歴史と文化が凝縮された場所です。その蕎麦を味わうことは、日本の蕎麦文化の歴史に触れる貴重な体験となるでしょう。浅草を訪れた際は、ぜひ足を運んでみてください。

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