丸文字

丸文字とは？：かわいらしい手書き文字の隆盛と変遷

丸文字とは、手書き文字の一種で、文字の角を丸くした書体のことを指します。別名として「ルンルン文字」「ネコ字」「まんが字」などと呼ばれることもあります。特に1970年代後半から1980年代にかけて、女子小中高生の間で広く用いられ、一世を風靡しました。

丸文字の特徴

丸文字は、文字全体を丸みを帯びた形状にすることが特徴です。これにより、従来の角ばった文字に比べて、柔らかく、可愛らしい印象を与えることができます。また、当時の丸文字には、特定の記号や装飾が用いられることもありました。例えば、平仮名の「へ」の右半分に「〃」を重ねて、宛名の後に書くといった用法がありました。

丸文字の歴史

丸文字は、1970年代に誕生し、1978年頃から急速に広まりました。その背景には、女性向けファッション雑誌『an・an』や『non-no』で採用された書体「ナール」の影響があったとされています。「ナール」は、文字の先端が丸く処理された、ふっくらとした字体が特徴です。また、漫画雑誌『りぼん』の漫画家近況欄の手書き文字が由来であるという説もあります。

1986年には、写研が「マル字五十音コンテスト」を開催し、全国から2500点を超える応募がありました。入賞作品は書体化され、「イクール」「エツール」「ヨシール」として発売されました。また、おニャン子クラブのメンバーだった永田ルリ子による手書き文字「ルリール」も写研から発売されています。

丸文字の衰退と新たな潮流

1990年代に入ると、丸文字の人気は徐々に衰え始めました。パルコ出版の雑誌『アクロス』の調査では、「トメのしっかりしたカクカクした文字」である「長体ヘタウマ文字」が増加していると報告されています。これは、1960年代生まれの「新人類世代」を中心とした80年代のぶりっ子文化が終わり、90年代の自然・日常を重視する1970年代後半生まれ以降の「脱・女の子」的な文化が主流になったことが原因ではないかとされています。

現在では、丸文字を書く人は少なくなりましたが、その影響は現代の手書き文字やフォントデザインにも見られます。手書き文字風フォントの中には、丸文字の特徴を受け継いだものが多く存在し、デジタル環境においても、丸文字のDNAは生き続けています。

社会現象としての丸文字

丸文字は、単なる手書き文字の書体としてだけでなく、当時の社会や文化を反映した現象としても捉えることができます。女子小中高生の間で流行した背景には、自己表現の欲求や、既存の価値観への反発など、様々な要因があったと考えられます。また、丸文字が社会に与えた影響は、フォントデザインや手書き文字文化など、多岐にわたります。

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