乾敏郎

乾敏郎：心理学者・脳科学者の経歴と功績

乾敏郎（いぬい としお）は、1950年に大阪府で生まれた心理学者および脳科学者である。彼は1974年に大阪大学基礎工学部生物工学科を卒業し、その後1976年には同大学院基礎工学研究科生物工学専攻修士課程を修了した。

その後、乾は人間の行動に関する研究に従事し、大阪大学人間科学部行動系行動工学に助手として就任。その後、1983年から1985年にかけて、京都大学文学部の哲学科において助手として働きながら、自らの研究を深めた。特に「視覚情報処理の基礎的メカニズムに関する心理学的研究」というテーマで1985年に京都大学から文学博士の学位を取得する。

1987年からは、視聴覚機構研究所の認知機構研究室で主幹研究員として活動を開始。その後、1991年に京都大学文学部哲学科心理学教室の助教授、1995年には教授に就任する。乾は1998年には京都大学大学院情報学研究科教授に昇進し、2015年に定年退任するまで、その研究を続けた。その功績により名誉教授の称号を受け、現在は追手門学院大学の教授として教鞭を執っている。

研究内容と業績

乾敏郎の研究は、主に言語および非言語コミュニケーション機能に関する認知神経科学的なアプローチによって構成されている。彼は、発達原理の解明に向けた研究や、コミュニケーション障害の背後にある脳内メカニズムについても注力している。彼の研究は、認知心理学や神経科学の枠を超えた多面的な視点を提供するものであり、実践的な教育や育成においても重要な知見をもたらしている。

彼の著作には、視覚情報処理の基礎を扱った『視覚情報処理の基礎』（1990年）、脳と視覚に関する解説を書いた『Q&Aでわかる脳と視覚』（1993年）、さらには『脳科学からみる子どもの心の育ち』（2013年）など、多くの重要な著書が含まれる。また、感情のメカニズムやその障害に関する現代科学的な視点を提供する『感情とはそもそも何なのか』（2018年）も多くの読者に影響を与えている。

編著や翻訳

乾は、Academic界でも多くの重要な編著や翻訳を行っており、その中には『認知と学習』（1993年）、『認知心理学 1 知覚と運動』（1995年）、および『感覚・知覚・認知の基礎』（2012年）などがある。これらの作品は、様々な学生や研究者にとっての貴重な資料となっている。

翻訳においても、重要な書籍を多く手がけており、たとえば、デビッド・マーの『ビジョン 視覚の計算理論と脳内表現』（1987年）や、S.J.ブレイクモアとU.フリスの『脳の学習力 子育てと教育へのアドバイス』など、他国の研究成果を日本に広める役割を担っている。

結論

乾敏郎の研究は、心理学と脳科学の接点における重要な洞察をもたらし、コミュニケーションや発達、感情の理解を深めるための基盤を築くことに貢献している。彼の豊かな経験と知識は、今後の研究や教育の現場においても大きな影響を与えることだろう。このように、乾の功績は、学際的なアプローチがもたらす知の広がりを象徴している。

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