介護離職

介護離職について

介護離職とは、家族を介護するために労働者が職を辞することを指します。高齢化社会の進展とともに、介護が必要な高齢者の数が増え、これに伴って介護離職の問題も深刻化しています。特に、団塊の世代が高齢化していくに連れ、この傾向はさらに顕著になると予想されています。

介護の現状

総務省の「平成29年就業構造基本調査」によると、介護を行っている人数は約627万人で、その中で働いている人は346万人に達しています。特に、介護を担っている男性の有業率は65.3%ですが、女性は49.3%と少し低めです。年齢別に見てみると、男性では55歳から59歳が最も有業率が高く87.8%にも上ります。女性は40歳から49歳が68.2%と最多となっています。

また、過去1年間に「介護・看護のために」退職した人は約99,000人で、このうち約75,000人が女性で占めています。この統計は、介護が女性により多くの負担をかけていることを示しています。また、介護をしている労働者の中でも、特に正規職員・正社員として働く者の割合が高いことが分かります。

雇用への影響

主な介護者は40代から50代の働き盛り世代であり、この世代が離職することは企業にとって大きな損失となります。彼らは企業内で重要な役割を担っていることが多く、管理職としての責任を持つケースも少なくありません。介護離職が進むことで、企業は熟練した労働者を失い、労働市場における競争力が低下する恐れがあります。

法律と制度

介護に関連する法律として、育児介護休業法があり、家族・親族の介護を行う労働者への支援制度が設けられています。しかし、介護の特性上、突発的な対応が必要となることが多く、仕事を持つ人にとって両立が難しい現実があります。突発的な介護の必要性やその長期化に対処できない場合、離職することが選択肢となってしまいます。また、介護終了後に経済的に厳しい状況になることや、再就職が難しいことが問題視されています。

政府の取り組み

国は、介護離職を防ぐためにさまざまな取り組みを行っています。「介護離職ゼロ」を目標として掲げ、介護サービスの充実や企業の働く環境の改善が進められています。2023年度には、介護離職を防止するための企業向け指針を策定する方針が示されています。

また、介護に関する制度の周知も重要な課題です。調査結果によれば、介護を行っている人の約90%が制度を利用したことがなく、制度の認知度が低いことがわかります。これに加えて、企業風土として「人手不足で休みにくい雰囲気」や「会社の理解がない」といった声も多く上がっています。

仕事と介護の両立支援

経済的な負担を軽減し、生活の安定を図るためには、仕事を続けながら介護を行える体制が求められます。企業側も、介護離職のリスクを認識し、制度の整備や周知を進めることで、職場の理解を深める必要があります。介護を続けながら働ける制度を活用することは、労働者にとっても企業にとっても重要な対策と言えるでしょう。

介護離職の問題は、今後の社会においてますます重要性を増してくるテーマです。労働者が介護と仕事を両立できる社会を実現するために、一層の努力が求められています。

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