伊藤涼

伊藤 涼

日本の音楽プロデューサー、そしてソングライターとして活躍する伊藤涼氏は、株式会社マゴノダイマデ・プロダクションの代表取締役を務めています。

経歴と初期の活躍

アメリカ合衆国マサチューセッツ州にあるバークリー音楽大学を2001年に卒業後、日本に帰国しジャニーズ・エンタテイメントに入社。そこで近藤真彦氏や少年隊、KinKi Kidsといった人気アーティストのディレクターを務め、手腕を発揮します。2004年にはメジャーデビューしたNEWSのプロデューサーに就任。さらに2005年には、テレビドラマ「野ブタ。をプロデュース」から生まれた限定ユニット、修二と彰によるシングル「青春アミーゴ」のプロデュースを手がけ、ミリオンセラーという大成功に導きました。

その後も、山下智久氏のヒット曲「抱いてセニョリータ」への関与や、テゴマスの海外デビューを仕掛けるなど、精力的に活動を続けましたが、2009年6月に同社を退社しました。その翌月には、自らが代表を務める株式会社マゴノダイマデ・プロダクションを設立し、独立を果たします。

コーライティングの普及と育成

伊藤氏は、欧米で一般的だった楽曲制作手法である「コーライティング」（Co-writing）を日本にいち早く導入し、その普及に貢献しました。数名の音楽家がチームを組み、作詞・作曲・編曲といった全工程を共同で行うこの手法は、作詞・作曲・編曲がそれぞれ分業されることの多かった日本の音楽制作において、新たな潮流を生み出しました。伊藤氏は自身もコーライティングによる楽曲制作に携わる傍ら、関連書籍を執筆しています。また、海外でよく行われる合宿形式の楽曲制作イベントであるコーライティングキャンプの日本版を企画し、2014年には第1回を開催しました。

また、プロの作詞家や作曲家の育成にも力を入れており、作曲家育成プログラム「山口ゼミ」や作詞家育成コミュニティー「リリック・ラボ」、そして山口ゼミの卒業生から選抜されたメンバーが集まる「コーライティング・ファーム（CWF）」といった場に関わっています。特に、育成講座でデモ作品に対して送られる厳しいコメントは、受講生たちの間で「伊藤斬り」として知られています。

多様な活動と功績

伊藤氏は音楽制作や育成だけでなく、多角的な活動を展開しています。雑誌CREAのウェブ版ではヒット曲に関するコラムを連載し、歌詞アナリストとしての顔も持っています。さらに、食と音楽を結びつける独自の取り組みとして、「フードミュージック・プロデューサー」を標榜しています。

2019年には、著作権管理事業者NexToneが主催するNexTone Award 2019において、安室奈美恵氏に提供した楽曲「In Two」が、著作物使用料分配額上位3作品に贈られるGOLD MEDALを受賞するという栄誉に輝きました。

同年には、コーライティング・ファームのエージェント機能を法人化し、株式会社CWFを設立。自身が代表取締役に就任しています。さらに2022年には、自身のプライベートスタジオである「magodai studio」を開設。ここはレコーディングの場としてだけでなく、コーライティングセッションを行うためのスペースとしても活用されています。

主な楽曲提供

伊藤氏は国内外の数多くのアーティストに楽曲を提供しています。代表的な作品としては、Kep1er「WA DA DA」（作詞）、安室奈美恵「Hope」（作詞・作曲、アニメ「ONE PIECE」主題歌）、「In Two」（作詞・作曲、NexTone Award 2019 Gold Medal受賞）、乃木坂46「走れ!Bicycle」（作曲）、OH MY GIRL「Etoile」（作詞・作曲、アニメ「ノブレス」EDテーマ）、超特急、=LOVE、BUDDiiS、Girls²、円神などへの提供が挙げられます。アイドルの楽曲からアニメ主題歌まで、その制作ジャンルは多岐にわたります。

プロジェクト「xpxp」

2020年には、音楽クリエイター自身が前面に出て音楽を発信するプロジェクト「xpxp」を始動させました。流動的なメンバー構成で、ヒロイズム氏とのコラボレーションシングル「DUMP YOUR BOYFRIEND feat. PAU (Prod. by her0ism)」などを発表しています。

著作

音楽制作やコーライティングに関する著書も複数執筆しています。

• - 『作詞力　ウケル・イケテル・カシカケル』
• - 『とびきり愛される女性になる。恋愛ソングから学ぶ魔法のフレーズ』（山口哲一氏と共著）
• - 『最先端の作曲法コーライティングの教科書』
• - 『役割シェア型の曲作りが、化学変化を起こす!』（山口哲一氏と共著）
• - 『Jポップ・デジタル作曲法　VOL. 4』（西尾周一郎氏と共著）

ジャニーズ事務所でのヒットプロデュースから独立、そしてコーライティングの普及・育成、さらに多様な活動まで、伊藤涼氏は現代日本の音楽シーンにおいて、プロデューサー、ソングライター、そして教育者として、多大な影響を与え続けています。

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