内密出産

内密出産についての詳細

内密出産（ないみつしゅっさん、英語：Confidential birth）は、母親が自らの身元を当局に開示することなく出産を行う手段を指します。この制度は、特に非嫡出子の誕生に伴う問題を考慮し、過去には頻繁に行われていた嬰児殺しを未然に防ぐため、多くの国で法制化されてきました。内密出産においては、母親の情報自己決定権が重要視され、子供の権利としての「出自を知る権利」が母親の選択によって保留されます。これは、母親が後に意思を変える場合や、子供が成長してその開示を求める段階に至るまで続く可能性があります。

内密出産と匿名出産

内密出産の概念をさらに進めているのが匿名出産です。この場合、母親は当局に対して全く身元情報を提示しない、または当局が知った情報を絶対に開示しないといった条件が含まれます。このため、母親にとっては、自身のプライバシーが保たれる一方で、子供が自らの出自について知りたいと思った場合の権利も考慮する必要があります。

歴史的背景

内密出産に関する法律は、1778年にスウェーデンで初めて登場しました。この時、嬰児殺防止法が匿名で出産できる権利を保障しましたが、1856年の法改正によって、助産師が母親の名前を秘密裡に保管することが求められるなどの制限が設けられました。

各国における内密出産の法制化

フランス

フランスでは1793年に内密出産が法制化され、民法典第326条において内密出産と匿名出産が明記されました。

ドイツ

ドイツでも2014年に内密出産が法制化されました。ここでは、カウンセリングを受けた上で匿名を希望する場合、内密出産が選択できることが定められています。

韓国

韓国においては、内密出産の制度化に向けた議論が進行中ですが、具体的な法整備はまだ行われていない状況です。

日本における内密出産の動向

日本では、関連する制度として「赤ちゃんポスト」があり、慈恵病院が「こうのとりのゆりかご」を運営しています。2019年12月に同病院は内密出産を受け入れる方針を発表しましたが、実際にはその後もケースは限られていました。

2022年には熊本市長が内密出産の方針を見直し、母子支援の協議を開始しました。これにより、母が名前を記載しない条件で出生届を提出した場合、戸籍の作成を市長が職権で行うことが可能となりました。

2022年には具体的な内密出産のケースも報告され、厚生労働省と法務省が初めて内密出産に関するガイドラインを策定しました。このように、日本における内密出産の制度は少しずつ進化を遂げています。

まとめ

内密出産は母親にプライバシーを提供する一方で、子供の出自に関する権利をどう扱うかという課題があります。社会全体で這うこの問題に対する理解が求められ、各国の制度や事例を参考にしながら、持続的な改善が待たれます。

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