凍天

福島を代表するソウルフード「凍天」：復活の物語

凍天（しみてん）は、福島県で親しまれている揚げ菓子です。その名の通り、凍らせた餅を特殊な生地で包み、油で揚げて作られています。外はカリッとしたドーナツのような食感、中は柔らかくモチモチとした餅の食感が絶妙に調和し、他にはない独特の味わいが魅力です。

誕生から福島を代表する名物菓子へ

凍天は、1989年、福島県南相馬市で創業した株式会社木乃幡（旧社名：有限会社コワタ食品）によって誕生しました。当初は露店での販売でしたが、その美味しさから瞬く間に人気を博し、1日に1000個以上を売り上げるほどになりました。その後、1996年には餅の専門店『もち処木乃幡』を開業。凍天は看板商品として、地元で愛される存在となっていきました。

福島駅や郡山駅への直営店出店を経て、凍天は福島県内では知らない人がいないほどの人気商品となりました。2011年2月にはテレビ番組で紹介され、その知名度は全国区へと拡大。注文が殺到し、売上は7倍に増加するほどの人気ぶりでした。

東日本大震災と事業再開

しかし、2011年3月11日に発生した東日本大震災は、凍天の事業に大きな打撃を与えました。本社工場が福島第一原子力発電所事故による避難区域となり、生産が一時的に停止せざるを得なくなりました。

この困難な状況の中、福岡県直方市の米菓製造業者「もち吉」の支援を受け、凍天の製造・販売を再開。2014年には宮城県名取市に新工場を建設し、生産体制の再構築に成功しました。

再起への挑戦と倒産、そして復活

新工場稼働後も、風評被害や借入金負担など、経営は容易ではありませんでした。2019年には売り上げの約3割を占めていた福島市の直営店が閉店。経営悪化は深刻化し、同年4月には残念ながら自己破産を申請することとなってしまいました。

しかし、凍天の味は人々の記憶に深く刻まれていました。2020年9月、福島市でヴァーナルの販売代理店などを営むキノシタコーポレーションが凍天の商標権と製造設備を取得し、東北自動車道国見サービスエリア（下り線）で販売を再開しました。約1年半ぶりに復活した凍天は、多くの人々を喜ばせました。

現在、凍天は国見サービスエリアを始め、いくつかの場所で販売されています。震災と倒産という大きな困難を乗り越えて復活した凍天は、福島の人々の努力と、その味への変わらぬ愛着の象徴と言えるでしょう。

凍天の味わい

凍天は、凍らせた餅のもちもちとした食感と、揚げたての衣のカリッとした食感が絶妙なバランスで調和しています。シンプルながらも奥深い味わいは、多くの人を魅了する理由です。一口食べれば、福島の豊かな自然と人々の温かさを感じることができるでしょう。

凍天の未来

凍天は、単なる菓子ではなく、福島の歴史と人々の想いが凝縮された存在です。これからも、多くの人々に愛され、福島を代表する名物菓子として、その美味しさを伝え続けていくことでしょう。

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