出雲路

『出雲路』は、船川利夫によって1960年10月に作曲された、全3楽章から構成される邦楽の組曲です。箏2パート、十七絃、尺八という編成で、日本の原風景を彷彿とさせる情景描写と、望郷の念が込められています。

各楽章の詳細

一楽章 清水寺の暮色

安来市にある清水寺は、小高い山の静かな場所に位置します。鬱蒼とした老木が生い茂る道を登っていくと、木立に囲まれた清水寺が現れます。夕暮れ時、鐘楼から響く鐘の音は、木々の間を吹き抜ける風に乗って静かに暮色を運び込みます。この楽章では、清水寺の静寂と、夕暮れの侘しさが、繊細な音色で表現されています。

二楽章 祭

社日神社の境内には笛の音が響き渡り、町には神輿が繰り出します。人々は祝いの酒を酌み交わし、安来節を歌い上げます。祭りの賑やかな喧騒の中にも、ふと哀愁が漂うのは、日本の祭りが持つ独特の表情です。この楽章では、祭りの熱気と、その背後にある寂しさが、鮮やかに描写されています。

三楽章 宍道湖の夕映え

静かな夕暮れ時、宍道湖は夕焼けに染まり、空も湖面も一瞬金色に輝きます。夕風が吹き、さざ波が立つと、波頭がきらきらと砕け散ります。秋ならば、陽はあっという間に沈み、束の間の美しい光景は終わりを迎えます。初夏の頃ならば、夕焼けの時間は長く続き、時の流れを忘れさせるほどです。この楽章では、宍道湖の夕景の美しさと、その儚さが、叙情的に表現されています。

楽器構成

1箏
2箏
十七絃
尺八

楽譜

株式会社 邦楽社から出版されています。

『出雲路』は、日本の美しい風景と、そこに生きる人々の心の機微を、豊かに表現した作品です。箏、十七絃、尺八という伝統的な楽器の音色を通して、聴く人の心に郷愁を呼び起こし、日本の心の原風景を映し出します。

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