化学品の分類および表示に関する世界調和システム

化学品の分類および表示に関する世界調和システム（GHS）の詳細解説

化学[[物質]]の危険性に関する情報を国際的に統一するシステムとして、GHS（Globally Harmonized System of Classification and Labelling of Chemicals）が国連によって制定されました。これは、化学[[物質]]（物質および混合物）の危険有害性の分類基準と、ラベル表示および安全データシート（SDS）の様式を定めたものです。パッケージや容器に直接貼り付けるラベルだけでなく、印刷されたものも含みます。

GHSの目的

GHSの主要な目的は、化学[[物質]]固有の危険有害性を明確に特定し、その情報を正確に伝えることにあります。ここでいう「固有」とは、化学[[物質]]が本来持つ、制御できない性質を指します。危険有害性（hazard）は、単に「危険性」（physical hazard）や「有害性」（health hazard/environmental hazard）と呼ばれる場合もあり、GHSでは文脈に応じて使い分けられています。

GHSは、国際的な整合性を保つための分類基準と、情報伝達のためのラベル表示とSDSの仕様を定めています。日本では、平成23年まではMSDSと呼ばれていました。

GHSの重要な用語

GHSでは、「物質（Substance）」は、自然状態または製造過程で得られる化学元素とその化合物を指します。製品の安定性を保つための添加物や製造工程由来の不純物は含みますが、物質の安定性や組成に影響せず分離可能な溶媒は除外されます。

「証拠の重み（Weight of Evidence）」は、危険有害性の分類において、全ての関連情報を総合的に評価することを意味します。in vitro試験、動物実験データ、疫学研究、臨床研究、ケースレポートなどを考慮します。

危険有害性のクラスと区分

GHSでは、物質や混合物の危険有害性は、物理化学的危険性、健康に対する有害性、環境に対する有害性の3つのタイプに分類され、さらに35のクラスに細分化されます。急性毒性、感作性、水性環境有害性などは、それぞれ複数のサブクラスに分けられます。

GHSは、分類を簡潔で透明なものにするために設計されています。しかし、多くのクラスでは判定基準が半定量的または定性的であるため、専門家の判断が必要です。有害性の測定値がしきい値以下の場合は「区分外（not classified）」となります。「区分内」、「区分外」の他に、「分類対象外」や「分類出来ない」という分類もあります。

各クラスは複数の区分（区分1、区分2など）を持ちます。区分は危険有害性の程度や証拠の重みによります。例えば、急性毒性は危険性の程度、発がん性は証拠の重みによって区分されます。

物理化学的危険性クラス

GHSでは17種類の物理化学的危険性が定義されています。例として、爆発物、可燃性ガス、エアゾール、酸化性ガス、高圧ガス、引火性液体、可燃性固体、自己反応性化学品、自然発火性液体、自然発火性固体、自己発熱性化学品、水反応可燃性化学品、酸化性液体、酸化性固体、有機過酸化物、金属腐食性化学品、鈍感化爆発物などが挙げられます。それぞれの詳細な定義はGHS原文を参照する必要があります。

健康に対する有害性クラス

GHSでは16種類の健康に対する有害性が定義されています。急性毒性、皮膚腐食性／刺激性、眼に対する重篤な損傷性／眼刺激性、呼吸器感作性または皮膚感作性、生殖細胞変異原性、発がん性、生殖毒性、特定標的臓器毒性（単回暴露、反復暴露）、吸引性呼吸器有害性などがあります。経口急性毒性では、危険性の程度によって区分1～5に分類されます。区分5は、特定の条件下で高感受性集団に危険を及ぼす範囲を指し、各国の判断で採用・不採用が決定されます。

環境に対する有害性クラス

GHSでは3種類の環境に対する有害性が定義されています。水性環境有害性（急性、慢性）とオゾン層への有害性です。水性環境有害性では、魚類、甲殻類、藻類への影響を基に分類されます。オゾン層への有害性は、モントリオール議定書の規制物質またはその成分を含む混合物を対象とします。

危険物の絵表示

GHSでは、危険有害性ごとに9種類のピクトグラムが定められています。EUでは、2019年以降、GHSに基づくピクトグラムへの移行が進んでいます。

日本のGHS対応

日本では、労働安全衛生法の改正により、2006年12月1日からGHSに対応したラベル表示が義務付けられました。99種類の化学[[物質]]について、危険性・有害性を示す標章（ピクトグラム）、化学[[物質]]名、有害性情報、取扱い方法などをラベルに表示することが義務化されています。「危険」と表示されるのは、物理的危険性だけでなく、毒性のある物質も含みます。また、640種類の化学[[物質]]について、SDSの交付も義務付けられています。

GHSの歴史

GHSの策定は、化学[[物質]]の分類とラベル、SDSを国際的に調和させる必要性から始まりました。輸送部門では、物理的危険性と急性毒性については既に国際的な調和が進んでいます。GHSは、この経験を基に、輸送だけでなく、労働現場や消費者への対応についても調和を目指したものです。国連経済社会理事会危険物輸送専門家委員会（UNCETDG/GHS）で、国連危険物輸送規則と連携して取り扱われ、両者の整合性が議論されています。2002年の世界サミットで2008年までの完全実施を目指すとされ、その後も国連決議で実施が促されています。2003年に最初のバージョンが発表され、以降改訂が繰り返され、2019年現在は改訂7版が最新版となっています。

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