反訴

反訴とは

反訴とは、民事訴訟において、訴えられた側（被告）が、その訴えを提起した側（原告）に対して、同じ裁判手続きの中で新たに提起する訴えのことです。簡単に言えば、被告が原告を訴え返す行為です。これにより、関連する紛争を一つの裁判でまとめて解決することが可能になります。

例えば、地主Aが借地人Bに対して、土地の明け渡しを求める訴訟を起こしたとします。この時、BはAの請求に対して反論するだけでなく、自分に賃借権があることの確認を求める訴えを、この同じ訴訟の中で提起することができます。これが反訴です。この例で、Aが最初に起こした訴訟を「本訴」と呼びます。

反訴制度の趣旨と沿革

反訴制度は、原告に訴えの変更や請求の併合が認められていることとのバランスをとり、被告にも原告に対する請求がある場合に、本訴の手続きを利用して審判を求める機会を与えるという、公平性の観点から設けられています。

歴史的には、反訴制度にはローマ法に由来する制度と、中世イタリア法学に由来する制度の二つがあります。ローマ法では、本訴と無関係な反訴も認められていましたが、中世イタリア法学では、本訴と反訴の間には関連性が必要とされていました。現在の日本の民事訴訟法では、本訴と反訴の間には関連性が必要とされており、これにより審判の重複を避け、判断の統一性を図ることが可能になっています。

日本における反訴

日本の民事訴訟法146条に反訴に関する規定があります。反訴を提起するためには、以下の4つの要件を満たす必要があります。

1. 事実審の口頭弁論終結前: 反訴は原則として、事実審（通常は第一審や控訴審）の口頭弁論が終結する前に提起する必要があります。ただし、控訴審で反訴を提起する場合は、相手方の同意または異議なく応訴することが必要です。
2. 本訴との関連性: 反訴は、本訴または本訴への防御方法と関連していなければなりません。この関連性がない場合でも、相手方が反訴に同意するか、異議なく応訴すれば認められます。
3. 訴訟手続の遅滞: 反訴の提起によって、著しく訴訟手続きが遅滞する場合は、反訴を提起することはできません。
4. 併合要件: 反訴請求は、他の裁判所の専属管轄に属さないなど、一般的な訴えの併合要件を満たしている必要があります。

これらの要件を満たさない反訴は、原則として却下されます。ただし、独立した訴えとしての要件を満たしていれば、本訴とは別の訴えとして扱うべきだという考え方もあります。

なお、人事訴訟では、本訴との関連性は要求されず、また反訴が禁止されている場合もあります。

反訴の手続き

反訴の手続きは、本訴の手続きに準じて行われます。反訴を提起するには、本訴が係属している裁判所に「反訴状」を提出する必要があります。

予備的反訴

反訴には、予備的反訴という種類があります。これは、本訴に対する請求棄却の申し立てをしつつ、もし本訴が認容された場合に備えて提起するものです。例えば、先ほどの土地の明け渡しの例で、Bが「Aの請求を棄却してほしい。もしAの請求が認められるなら、自分には賃借権があることを認めてほしい」と訴える場合が、予備的反訴に当たります。

反訴が禁止される場合

以下の訴訟手続きでは、反訴が禁止されています。

手形訴訟
小切手訴訟
* 少額訴訟

アメリカ合衆国での反訴

日本では、反訴をするかどうかは当事者の判断に委ねられていますが、アメリカ合衆国などの国では、訴訟経済の観点から、反訴を提起すべき場合に別個の訴訟を提起することを認めない制度（強制反訴）を採用しています。

まとめ

反訴は、訴訟手続きを効率的に進め、関連する紛争を一度に解決するための重要な制度です。民事訴訟において、被告が積極的に自己の権利を主張する手段として活用されています。反訴の要件や手続きを理解することは、訴訟を適切に進める上で重要になります。

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