否認

否認の概念

否認（ひにん）とは、申し立てが事実でないと主張する行為を指します。心理学の領域では、ジークムント・フロイトによって防衛機制の一つとして位置づけられています。具体的には、人が直面したくない厳しい現実や不快な事実を、圧倒的な証拠に反して拒否することを意味します。

否認の形態

否認は様々な形態を取り得ます。以下にその一部を挙げます。

• - 単純な否認: 事実そのものを完全に否認します。不快な現実から逃れるために、意図的に認めないのです。
• - 最小化（ミニマイゼーション）: 事実を認めながらも、その重要性や影響を過小評価します。
• - 投影: 事実とその重大性は認識しているものの、自分の責任を他者に転嫁することで、否認に至ります。

さらに、キューブラー＝ロスモデルでは、否認は死に至る過程の最初の段階とされています。

心理学における否認

否認は、現実を受け入れることが難しいときに利用され、事実を避けるためにしばしば嘘が用いられます。このような行動は、自分や他人にとって苦痛を伴う事実から逃れる手段です。

責任の否認

責任の否認は多様で、以下のようなパターンが存在します。

• - 非難: 自身の行動の結果を他人に責任転嫁します。
• - 最小化: 自らの行動が及ぼす影響を軽視します。
• - 合理化: 選択や行動について、その場の状況に適した正当性を主張します。
• - 退行: 本来ならば大人としての判断が求められる場面で、幼児的な行動を示すことがあります。

また、ハラスメントでは、加害者による広範な攻撃行動が見られます。そこで適用される「DARVO」は、加害者が虐待を否認し、被害者を攻撃し、さらにその立場を逆転させる戦略を指します。

アディクションにおける否認

自身の依存症（嗜癖）を否認することは、治療において非常に重要な要素です。否認は病的な防衛機制として機能し、依存を継続するための言い訳となります。例えば、「世の中はつまらないので依存する」「自分は特別な存在だから問題ない」といった思考が典型的です。

否認の三段階

依存症に関連する否認には、以下の三つの段階があります。
1. 第一の否認: 「自分は大丈夫」と言い、依存の呪縛から自らを解放しようとします。
2. 第二の否認: 「いつでもやめられる」と主張し、セルフコントロールはできると信じます。
3. 第三の否認: 「やめれば大丈夫」と自らの問題の存在を認めず、依存によるダメージからの回復を過信します。

治療と否認

12ステップのプログラムにおいては、否認の概念が重要な役割を果たします。特に第1、第4、第5、第8、および第10ステップでは、否認を解消し、自己認識を促す内容が含まれています。否認を放置することは、治療が効果を持たない理由の一つとされています。

このように、否認は心理的な防衛機制として様々な目的で発揮され、重要な心理的な健康や社会的な関係に大きな影響を与えます。

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