坪井透

坪井 透氏の経歴とかすみがうら市政

坪井 透氏は、1950年2月7日に茨城県新治郡千代田村（現在のかすみがうら市）下稲吉で生まれました。地元の千代田村立下稲吉小学校を1962年に卒業後、中学校については、本人の公式サイトなどで「千代田村立下稲吉中学校卒業」と公表されていますが、この中学校は1981年の開校であり、坪井氏の卒業時期には存在していなかったため、学歴に関する情報に不正確な点があることが指摘されています。高校は茨城県立石岡第一高等学校園芸科を1968年3月に卒業しました。

高校卒業後は農業の道に進みましたが、流通の問題から十分な収入が得られない状況に直面しました。この経験から、農産品の加工、直販、出荷を手がける会社「マルツボ」を20代半ばで設立し、経営者としての手腕を発揮します。

政治家としての歩み

坪井氏は、1995年の千代田町議会議員選挙で初当選し、政治の舞台に立ちました。町議を2期務めた後、2002年12月に行われた茨城県議会議員選挙に無所属で挑戦し、初当選を果たします。県議会議員としての活動を経て、地方自治体の首長を目指すことになります。

2006年7月のかすみがうら市長選挙に自民党と公明党の推薦を受けて立候補し、無投票で初代かすみがうら市長として就任しました。しかし、2010年7月の市長選では対立候補に僅差で敗れ、一度市長の職を離れます。その後、2014年7月の市長選で現職を破り返り咲きを果たし、2期目を務めました。続く2018年7月の市長選でも当選し、3期目に入りました。2022年4月には、同年7月に行われる次期市長選挙への不出馬を表明し、任期満了をもって市政から退きました。

市長在任中の公約と主な出来事

3期目の当選を果たした2018年の市長選では、地域経済の活性化、交通インフラの整備、観光振興、市民サービスの向上などを柱とする様々な公約を掲げました。具体的には、東西縦貫道路や広域緊急道路の整備、常磐自動車道の千代田石岡インターチェンジ周辺の土地利用促進と企業誘致、市内へのスマートインターチェンジ整備による産業振興、中心市街地の活性化や行政機能・図書機能の整備、歩崎公園周辺での体験・滞在型観光の推進、観光帆引き船の継続支援、果樹産業の再興、霞ヶ浦りんりんロードを活用した観光・スポーツ振興、かすみがうらブランドづくり助成金の創設、そして近隣自治体との広域連携強化などを公約に掲げ、市政運営にあたりました。

しかし、市長在任中にはいくつかの課題や出来事も注目されました。

妻が代表を務める企業の納税問題

坪井氏が1期目の市長に就任するにあたり、経営していた「マルツボ」の代表を妻である坪井あや子氏に交代しました。その後、マルツボは脱税の容疑で水戸地検に検挙される事態となりました。2012年7月4日、水戸地方裁判所土浦支部は、マルツボに罰金600万円、あや子氏に懲役10カ月、執行猶予3年の有罪判決を言い渡しました。判決では、2007年7月から2010年6月にかけて、売上の一部を除外し約2,400万円を脱税したと認定され、裁判長は「被告人個人の納税意識の欠如だけでなく、親族経営にかかわる法人の経営のあり方や、その体質全般に根ざした病理とも評されて然るべき犯行」と指摘しました。この判決に対し、あや子氏は控訴せず確定しました。坪井氏が2期目の市長選挙に当選した2014年7月当時、あや子氏はまだ執行猶予期間中でした。

議員報酬の増額提案と撤回

1期目の市長在任中、市議会議員選挙後の2007年1月には、市議会議員の報酬を大幅に増額する提案を行いましたが、これは一般市民からの強い反発を招きました。この問題は日本テレビやテレビ朝日の番組でも取り上げられ、世論の批判を受け、最終的に増額提案は撤回されました。

庁舎前の看板

かすみがうら市役所の庁舎前（千代田地区と霞ヶ浦地区の両方）には、坪井氏が掲げた「交通安全宣言の街 かすみがうら市」と記された看板が設置されています。興味深いのは、その数メートル離れた場所に、前市長の宮嶋光昭氏による「非核・脱原発・平和宣言都市 かすみがうら市」と記された、色や大きさが異なる別の看板も並んで立っていることです。2期目の市長時代、この状況について議会で議員から、坪井氏自身の思想と異なる前市長の看板を撤去しないのかという質問が出ました。これに対し坪井氏は、「あちらの看板もせっかく立てたものであり、取り外すのはもったいないので、そのままにしておきましょう」と答弁しています。

市職員による飲酒運転事件

坪井氏の市長在任中には、市職員による飲酒運転事件が複数件発生しています。2017年1月には消防本部予防課の消防士長が、同年10月には社会福祉課の課長補佐が、それぞれ酒気帯び運転の容疑で摘発されたことが公表され、処分の方針が示されました。

政治倫理条例制定要望への対応

任期中、市議会において議員から繰り返し「政治倫理条例の制定」に関する要望が出されました。しかし、坪井氏はこれらの要望に対して、具体的な制定の理由や必要性に関する明確な答弁を避け、制定に向けた具体的な取り組みを示しませんでした。2017年6月の定例議会で、議員が近隣自治体での制定状況に触れつつ、市長が制定を避ける理由や特別職としての責務に関する考えを問うた際にも、坪井氏は「条例を提案するには、各分野において共通の高い倫理観が必要と思われる。今後も、各分野の状況把握に努めて参る」と述べるにとどまり、具体的な進展は見られませんでした。

坪井氏の政治家としてのキャリアは、農業経営者としての経験を出発点とし、地方議員から市長へと至る道のりでした。在任中には、地域の発展を目指す政策を推進する一方で、身内の不祥事や市政運営における判断など、様々な出来事や課題に直面しました。2022年の退任をもって、その政治活動に区切りをつけました。

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