報土寺

東京都港区赤坂の地にある報土寺（ほうどうじ）は、真宗大谷派に属する歴史ある寺院です。その起源は江戸時代初期、慶長19年（1614年）に遡ります。永受法師によって開基されたこの寺院は、山号を咲柳山（しょうりゅうざん）と称し、寺号は報土寺といいます。

報土寺の開基である永受法師には、深い由緒が伝えられています。法師は、戦国時代の越前を治めた大名、朝倉義景の末裔であるとされています。伝えられるところによれば、義景が戦陣へ向かう際、常に兜の中に大切に納めていたという「阿弥陀如来銅像」を、永受法師は混乱の世を避けてこの地に落ち延びる際に携えてきたとされています。この由緒ある阿弥陀如来銅像は、現在も報土寺の本堂に安置されており、創建以来の歴史を見守り続けています。

創建当初、報土寺は現在の赤坂五丁目辺りにあたる、赤坂一ツ木大沢の里にありました。しかし、江戸幕府による用地取り上げのため、安永9年（1780年）に現在の地、三分坂下の台地へと移転しました。爾来、この地で多くの人々の信仰を集め、歴史を重ねています。

境内には、江戸時代を代表する大相撲力士として名高い雷電為右ヱ門をはじめ、儒学者として知られる井部香山、そして近代日本の写真術の発展に貢献した写真家・丸木利陽といった、後世に名を残した人々の墓があります。また、画家・野村文挙を顕彰する碑も建立されており、様々な分野で活躍した人物と寺院との関わりを示しています。

さらに、報土寺には貴重な文化財も伝わっています。境内の築地塀（練塀）と梵鐘は、港区の有形文化財に指定されています。築地塀は、土と瓦を交互に積み重ねて突き固めた日本の伝統的な塀で、その重厚な姿は長い歴史を感じさせます。梵鐘もまた、時代の変遷を見つめてきた貴重な品であり、地域の歴史を物語る存在です。

このように報土寺は、開基の伝説に始まる戦国時代との繋がり、江戸期における移転の歴史、そして近世・近代の著名人とのゆかりや、港区指定文化財を有するなど、多様な側面からその歴史的価値を知ることができます。静かな境内には、過ぎ去った時代を偲ばせる様々な痕跡が息づいており、訪れる人々に深い感慨を与えています。

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