塚本やすし

絵本作家 塚本やすし：東京の下町から世界へ羽ばたく、多彩な才能

塚本やすし氏は、1965年東京都墨田区生まれの絵本作家です。幼少期から絵を描くことを愛し、小学校時代の図工の授業で才能を認められたことが、後の進路選択に大きく影響を与えました。

活気に満ちた下町で育った彼は、少年時代を「わんぱく小僧」として過ごしました。しかし、その一方で、絵への情熱を燃やし続け、高校卒業後はデザイン会社に勤務しながら、イラストレーターとしての道を歩み始めます。

デザイン会社勤務時代には、数々のイラストコンペに参加し、玄光社の『ザ・チョイス』で入選を果たすなど、着実に実績を積んでいきました。入選をきっかけに仕事の依頼が増え、独立して自身の会社を設立。しかし、10年以上が経過した頃、自身の真の夢に向き合う決意を固め、絵本作家への転身を図ります。

当初は他の作家の文章にイラストを提供する仕事からスタートしましたが、創作意欲は次第に高まり、自らが文章も書く絵本制作へと進みます。2010年発表のオリジナル絵本『このすしなあに』で、絵本作家としての道を本格的に歩み始めました。

食べ物から戦争まで、多岐にわたるテーマと「本物」へのこだわり

塚本氏の作品は、そのテーマの幅広さが特徴です。食べ物をモチーフにした作品が多い一方で、戦争をテーマにした作品も手がけており、戦争を知らない世代が増えていくことへの深い懸念が、その創作活動の原動力となっています。

彼の作品には、「本物」への強いこだわりが貫かれています。例えば、介護をテーマにした絵本『介護のえほん だいじょうぶだよ、おばあちゃん』を制作するにあたり、ヘルパー2級の資格を取得。また、ラジオ体操を題材にした作品では、ラジオ体操指導員資格も取得するなど、徹底したリサーチと準備で作品作りに臨んでいます。

自宅には妻が調理師であることもあり、プロ仕様の調理器具が揃っており、子供の運動会では、カツ丼を岡持ちに入れて運んだエピソードも披露しています。そのエピソードからも、彼のユーモラスな人柄と、家族を大切にする温かい気持ちが伝わってきます。

飽きっぽく、転居を繰り返すこともありますが、生粋の墨田区民であることには変わりません。下町生活で培った豊かな感性と経験が、彼の作品に独特の温かさと深みを与えていると言えるでしょう。

多彩な作品と受賞歴

塚本やすし氏の作品は絵本にとどまらず、エッセイ『猫とスカイツリー――下町ぶらぶら散歩道』も出版されています。絵本作品は、食べ物や動物を題材にしたものから、戦争や平和、介護、社会問題など、幅広いテーマを扱っています。

代表的な絵本作品には、『このすしなあに』『はしれ! やきにくん』『このおっぱいだあれ』『おでんしゃ』『アイススケートペンギン』などがあります。これ以外にも多くの絵本を出版し、子どもたちだけでなく大人にも感動を与え続けています。

その才能は高く評価されており、数々の賞を受賞しています。主な受賞歴には、1995年度ザ・チョイス年度賞、第6回リブロ絵本大賞、第25回けんぶち絵本の里大賞・びばからす賞、第7回ようちえん絵本大賞、わかやま絵本大賞2017などがあります。

イラストレーターとしての活動も盛んで、多くの書籍や雑誌の挿絵・イラストを手掛けています。その対象は絵本にとどまらず、小説、詩集、ノンフィクションなど多岐に渡ります。

塚本やすし氏は、自身の経験や感性を活かし、多様な表現方法で作品を作り続けています。彼の作品は、子どもたちに夢と感動を与え、大人にも人生の様々なことを考えさせる、力強いメッセージを秘めています。これからも、彼の活躍から目が離せません。

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