失認

失認についての詳細

失認（しつにん）とは、特定の感覚を用いて対象物を認識することができない障害のことです。この病態は視覚、聴覚、触覚など複数の感覚に影響を及ぼす可能性があり、神経心理学の観点からは高次脳機能障害の一環として捉えられています。具体的には、視覚に関連する失認や、聴覚に関連する失認などが存在します。

失認の定義

神経心理学において、失認は単なる感覚障害や知能の低下、注意障害、失語による呼称障害、または刺激に対する知識の欠如とは異なり、特定の感覚を通じての対象認知に限られた障害として定義されています。このため、失認が実際に存在するのか疑問視されることもあります。

視覚失認

視覚失認とは、視覚的な刺激を適切に理解できない状態を指します。これは要素的な感覚障害がないにもかかわらず、視覚的提示の認知が妨げられることによって起こります。古典的な神経学的モデルでは、視覚的情報の処理は「視覚分析」「認知」「呼称」という3つの段階から成り立っています。このうち、認知段階が障害されることが視覚失認とされます。視覚失認の特徴は、視野内のどの位置に対象があっても認知に影響が出ることです。

視覚失認の分類

視覚失認はその障害が生じる段階や対象のカテゴリーによって分類されます。以下に代表的な型を挙げます。

1. 早期段階による分類
- 統覚型視覚失認: 基本的な視覚情報は保たれているけれども、全体の形として対象を把握できない状態です。
- 連合型視覚失認: 視覚的には認識できても、過去の経験と結びつかずに対象がわからないケース。模写は可能でも、名前の呼称はできません。
- 統合型視覚失認: 視覚情報を基に部分的な形を全体の形と結びつけられない状態です。

2. 対象のカテゴリーによる分類
- 視覚性物体失認: 物に対する認識障害が生じた場合。
- 失認性失読: 文字の認識ができない状況です。
- 相貌失認: よく知っている人の顔を認識できないが、声や服装での識別は可能です。
- 色彩失認: 色の認知に障害がある状態を指しますが、厳密には視覚と言語の結びつきの障害とも言われています。

聴覚失認

聴覚失認は、聴力に異常がないにもかかわらず、音を認識できない状態を示します。これには言語音と非言語音の認識障害が含まれ、厳密な分類が必要で、言語音のみ認識できない場合を純粋語聾、すべての音を認識できない場合を全般性聴覚失認と分けることができます。

聴覚失認での検査

聴覚失認に対する評価には聴力検査や聴覚脳幹誘発電位が行われ、場合によっては失語症との鑑別が必要です。この際、聴覚以外の刺激に対しては理解が可能であることが診断の要件となります。

まとめ

失認は非常に多様な形態と原因を持つ障害であり、その理解は神経心理学の重要なテーマの一つです。視覚や聴覚の認知が障害されることで、日常生活においてさまざまな影響を受ける可能性があるため、早期の診断と適切な治療アプローチが必要です。

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