安来節

安来節について

安来節（やすぎぶし）は、島根県安来市で受け継がれている民謡で、「どじょうすくい踊り」の伴奏曲として有名です。この伝統的な音楽は、地域の文化や歴史を深く反映しており、観光資源としての役割も果たしています。

歴史的背景

安来節のルーツは江戸時代中期、七七七五調の歌が歌われたことに始まります。北前船の寄港地である安来港では、船頭たちによって民謡が数多く歌われており、民謡の交流が活発でした。この中で、特に天保年間に現れた芸妓「おさん」が歌った「さんこ節」は、安来節とよく似たメロディであったとされています。その後、嘉永年間には、鍼医の大塚順仙がこの「さんこ節」を改良し、結果的に安来節が生まれたと考えられています。

現代の安来節の形が整えられたのは明治時代以降で、特に明治初期には出雲地方で人気を集めました。地元では、8月に行われる月の輪まつりで、数多くの男女が踊りを披露したりするなど、活気に満ちた祭りが開催されます。また、1911年には安来節保存会が設立され、伝統を守る活動が開始されました。

さらには、初代の渡部お糸が出雲から全国巡業を行うことで、安来節の知名度が高まりました。多くの人々がこの民謡と踊りを楽しみ、特に大阪においては吉本興業が安来節を導入し、道頓堀で大成功を収める契機となりました。この流れを受けて、都内や大阪には安来節の専用劇場も誕生しました。

安来節の運用と振興

2014年には安来節が安来市の無形民俗文化財に指定され、2016年には「出雲國たたら風土記」が日本遺産に認定され、安来節がその構成文化財に加えられました。さらに、2018年には連続テレビ小説『わろてんか』に安来節が取り上げられ、ドキュメンタリー的なフィルムとして、新たな世代にこの文化を再認識させる機会となりました。

特色ある踊りと演技

安来節に欠かせないのは「どじょうすくい」という踊りです。この踊りは、男性と女性で異なるスタイルがあり、男性はカスリの上着とズボン姿で豆絞りを頭に被り、厳密な形はない自由なアドリブが許されるため、各演者の個性が際立っています。

女性二人一組で踊る「女踊り」は、より繊細で優雅な動きが特徴です。また、どじょうすくいの踊りは地元の安来鋼の製造過程を模したものであると言われており、伝承される中で様々な解釈が生まれています。

さらに、安来節には独自の手振りで演奏される銭太鼓などの余技も存在し、これが踊りを一層盛り上げます。これによって、観客はより深い体験をすることができ、地域の文化を理解する手助けとなります。

町おこし活動

安来市では、安来節の教室を設けて地域住民や観光客に対して指導を行い、様々なラップを活かしたイベントや行事が定期的に開催されます。特に、安来ドジョウ寿司などのご当地グルメを開発し、新たな観光資源としての価値を高めています。

最近では、安来高等学校の生徒たちが「1000人銭太鼓プロジェクト」を立ち上げ、共同で演奏することで地域の伝統文化を内外にアピールしています。このような活動により、安来節は地域のアイデンティティを確立し、さらなる発展を遂げています。

安来節演芸館

2006年に開館した安来節演芸館は、観光客を誘致するための公演施設です。しかし、その後の設備老朽化に伴い、2023年から約一年の休館を経て、2024年に新規グランドオープンする運びとなります。

安来節の持つ魅力は、歴史と共に深まり続けており、地域の人々の誇りとして愛され続けています。

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