山口情報芸術センター

山口情報芸術センター（YCAM）

山口情報芸術センター（YCAM、Yamaguchi Center for Arts and Media）は、山口県山口市の中園町に位置する、メディアアートを専門とする複合施設です。図書館、ホール、美術館といった多様な機能を備え、コンピュータや映像を用いた現代芸術の企画展や制作、上演など、幅広い活動を行っています。愛称は「ワイカム」または「ビッグウェーブやまぐち」として親しまれています。

YCAMの概要

YCAMは、旧山口市の第4次総合計画に基づき、「情報・業務・文化ゾーン」の再開発の一環として建設されました。建築家磯崎新氏の設計による斬新な建物は、その規模とデザインで話題を呼びました。2003年の開館以来、メディアアートの拠点として国内外から注目を集め、中四国地方で唯一「優良ホール100選」にも選ばれています。また、平成20年には公共建築賞文化施設部門を受賞しています。

YCAMは、山口市文化振興財団が運営しており、山口市立中央図書館も併設されています。そのため、図書館として地域住民に親しまれるだけでなく、メディアアートや現代美術の企画展、市民による芸術発表の場、演劇や映画の上映、ワークショップなど、多様な文化活動を展開しています。しかし、作品の収蔵はせず、制作と展示に特化している点が特徴的です。

開館までの道のりと困難

YCAMの建設は、決して平坦ではありませんでした。70億円もの建設費と年間5億円の維持費、さらに周辺整備費用を加えると総額は100億円を超え、市の財政を圧迫する懸念がありました。加えて、当時まだ一般には馴染みの薄かったメディアアートを専門とする施設であるという点も、市民からの理解を得る上で課題となりました。

実際、開館前には市民向けの展覧会やワークショップを開催し、理解促進に努めましたが、市長選挙の争点となり、一時建設が凍結される事態も発生しました。しかし、市民委員会による議論や合意形成を経て、建設は再開され、2003年11月1日に開館しました。

開館後の出来事

開館後も、台風による屋根の損傷といった困難に見舞われました。2004年の台風18号では、屋根材が大量に吹き飛ばされる被害を受けましたが、設計や施工上の問題はなかったと判断され、補修工事が行われました。その後も台風による被害は発生しましたが、規模は縮小しています。

施設紹介

YCAMは、市立図書館に加え、多目的スタジオ（A、B、C）、アート制作のためのラボラトリー、広々としたホワイエなど、多様な施設を備えています。かつてはFMラジオ局を運営し、館内イベントの放送を行っていましたが、現在は終了しています。

アクセス

YCAMへのアクセスは、JR新山口駅から防長バスで約25分、またはJR山口駅から徒歩、バス、タクシーでアクセス可能です。車の場合は、山陽自動車道防府東ICまたは中国自動車道小郡ICからアクセスできます。

YCAMの役割

YCAMは、単なる文化施設にとどまらず、地域社会に貢献する多様な役割を担っています。メディアアートを通して、地域住民の創造性を育み、国際的な文化交流の拠点として、山口市、ひいては日本の文化の発展に貢献し続けています。その存在は、地方都市における文化振興の可能性を示す好例と言えるでしょう。

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