岩津ねぎ

岩津ねぎ：歴史と特徴、そして未来

兵庫県朝来市岩津地区で生産される岩津ねぎは、古くからその品質の高さで知られる伝統野菜です。かつては下仁田ねぎ、博多万能ねぎとともに日本三大ねぎの一つに数えられていましたが、現在ではその呼称の使用は自粛されています。それでも、岩津ねぎが持つ独特の風味と歴史は、多くの人々を魅了し続けています。

由緒ある歴史

岩津ねぎの名前は、朝来市岩津地区（かつての岩屋谷村と津村子村）が原産地であることに由来します。その歴史は古く、1803年（享和3年）には既に津村子村で栽培されており、優れた品質で知られていたことが、1903年（明治36年）刊行の『朝来志』にも記録されています。江戸時代には、生野代官所の役人が京都から九条ねぎの種子を持ち帰り、生野銀山の労働者向けの野菜として栽培が開始されたと伝えられています。

特徴的な性質

岩津ねぎは、白ねぎと青ねぎの中間種で、青い部分から白い部分まで全て食べることができます。柔らかな食感と、強い甘みと香りが特徴です。円山川上流の狭い谷あいの環境、夏はフェーン現象による暑さ、冬は積雪による寒さなど、寒暖差の大きな気候条件が、岩津ねぎの独特の風味を育んでいると考えられています。九条ねぎが、この地域の環境に適応して変化したという説や、昭和初期に他のねぎとの自然交配により現在の特徴が形成されたという説もありますが、明治期以前からその品質が高く評価されていたことは明らかです。

生産と流通

岩津ねぎの出荷には、「葉数2枚以上」「葉長1枚15cm以上」「全長70cm以上」といった厳しい規格が設けられています。昭和初期には、兵庫県からの補助金を受けて生産量を増やし、生野銀山周辺の鉱山関係者や、京阪神、首都圏などへ広く出荷されていました。輸送手段は、鉄道からトラック輸送へと変化し、国道312号線沿いの直売所での販売も盛んに行われています。著名な料理研究家である故土井勝氏も、テレビ番組で岩津ねぎを絶賛していました。

近年の取り組み

近年は、生産者高齢化や栽培戸数の減少が課題となっています。しかし、品質維持とブランド化のため、2003年には朝来市岩津ねぎ生産組合が商標登録を行いました。2017年には大雪による被害を受けたねぎを「雪折れ岩津ねぎ」として特別に販売するなど、様々な工夫が凝らされています。また、より太い「極太岩津ねぎ」の試験栽培も進められています。

未来への展望

200年以上の歴史を持つ岩津ねぎは、朝来市の重要な特産物です。生産量の減少という課題はありますが、生産組合による品質管理やブランド化の取り組み、そして新たな品種開発など、未来に向けて様々な努力が続けられています。岩津ねぎが持つ豊かな風味と歴史は、これからも多くの人々を魅了し続けるでしょう。

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