悪い男

『悪い男』（原題：나쁜 남자）は、2001年に公開された韓国映画です。第52回ベルリン国際映画祭コンペティション部門にも出品されるなど、高い注目を集めました。

本作で主演を務めたチョ・ジェヒョンは、見事第38回百想芸術大賞映画部門最優秀演技賞を受賞。彼の圧倒的な演技力が、この作品を彩っています。

物語の中心は、ヤクザの男・ハンギと、清楚な女子大生・ソナの出会いです。繁華街のベンチで、ソナに一目惚れしたハンギは、彼女の恋人の元へ走っていくソナを強引に引き止め、キスを奪います。ソナの激しい拒絶にも関わらず、ハンギは執拗に彼女を追い求めます。

ハンギという男は、寡黙でセリフが非常に少ないという設定です。その静かな佇まいと、内に秘めた情熱が、観る者の心を掴みます。一方、ソナはハンギの強引な行動に戸惑い、怒り、そして複雑な感情を抱きながら物語に巻き込まれていきます。

映画は、ハンギとソナの複雑な関係性を通して、愛と欲望、そして人間の業を描いています。二人の間に生まれる、激しい感情のぶつかり合いは、時に残酷で、時に美しい。観る者の心に深く突き刺さる、重厚なドラマです。

映画評論家の寺脇研氏は、本作をフェミニズムの観点から批判的な意見もあるとしながらも、その高い芸術性と、チョ・ジェヒョンの圧倒的な演技力を高く評価し、自著『韓国映画ベスト100』でベストテンに選出しています。

キャストは、チョ・ジェヒョン演じるハンギ、ソ・ウォン演じるソナのほか、チェ・ドンムン、キム・ユンテ、キム・ジョンヨン、イ・ハヌィなど、実力派俳優たちが脇を固めています。

ソ・ウォンは本作での演技が認められ、第39回大鐘賞新人女優賞を受賞しました。

『悪い男』は、単なる恋愛映画の枠を超えた、人間の深淵を覗き込むような作品です。静謐な中に潜む狂気、そして、その狂気に引き込まれていく人間の脆さ。この映画は、観る者に忘れられないほどの強い印象を与え、心に長く残る余韻を残します。また、2005年には津原泰水氏によるノベライズも出版されています。

様々な解釈を生み出す、深く考えさせられる作品として、『悪い男』は韓国映画史に名を残す一本と言えるでしょう。

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