悪魔の棲む家

悪魔の棲む家：実話に基づく恐怖の物語

1979年公開のアメリカ映画『悪魔の棲む家』(The Amityville Horror)は、ジェイ・アンソンによるベストセラー小説『アミティヴィルの恐怖』を映画化した作品です。舞台はニューヨーク州ロングアイランドのアミティヴィルにある、1974年に凄惨な一家惨殺事件が発生したことで知られる大邸宅。この映画は、その事件の後、新たな家族がその家に引っ越してきたことで起こる恐るべき超常現象を描いています。

事件の発端：デフェオ一家惨殺事件

1974年11月13日、アミティヴィルの大邸宅でデフェオ一家6人が殺害されるという痛ましい事件が発生します。犯人は長男のロナルド・デフェオ・ジュニアで、彼は就寝中の両親と4人の弟妹をライフルで射殺した後、自ら警察に通報しました。逮捕後、彼は「家に殺すよう命じられた」と不可解な供述をしたと言われています。この事件は、後に映画の暗い背景として描かれることになります。

新たな住人：ラッツ一家

事件から1年後、ジョージとキャシー・ラッツ夫妻とその3人の子供たちは、この大邸宅に引っ越してきます。新聞広告でこの家の安価な価格に目をつけ、殺人事件の過去を知りながらも購入を決意します。引っ越し当初は期待に胸を膨らませていた一家ですが、すぐに奇妙な出来事が起こり始めます。ジョージや娘のエイミーは体調を崩し、その後、次々と怪奇現象に見舞われるのです。

映画の描写：恐怖の描写と超常現象

映画では、ラッツ一家を襲う様々な超常現象が克明に描かれています。血まみれの壁、奇怪なノイズ、悪夢、そして謎めいた存在の気配など、観客を恐怖の淵へと突き落とす演出が施されています。特に、家の地下室や子供部屋といった特定の場所では、より強い悪霊の気配を感じさせる描写が印象的です。これらの現象は、単なる偶然の一致なのか、それとも何か別の存在の仕業なのか、観客は最後まで謎解きを強いられます。

原作小説との差異と論争

映画の原作小説『アミティヴィルの恐怖』は、実話に基づいていると謳われていますが、その内容は実際には多くの虚偽が含まれていると指摘されています。ラッツ一家が実際にこの家に住んだことや、最終的に家を出て行ったことは事実ですが、その理由は経済的な問題であり、映画で描かれるような超常現象とは関係ありません。

実際には、事件で被告のロナルド・デフェオ・ジュニアの弁護を担当した弁護士が、ラッツ夫妻に超常現象の話を持ちかけ、体験談を出版することで多額の収入を得られると提案したとされています。この弁護士は、夫妻がワインを飲みながら、怪奇現象を喜んで考えていたと証言しています。一方、夫妻は弁護士がデフェオ・ジュニアに有利な証言を強要していたと反論するなど、複雑な人間関係と金銭トラブルが背景にあったことが明らかになっています。

評価と影響

『悪魔の棲む家』は、公開当時大きな話題となり、興行収入も成功を収めました。しかし、その一方で、映画の内容や原作小説の信憑性に対する批判的な意見も多く存在します。著名なホラー作家スティーブン・キングは、この映画を「経済的な恐怖の作品」と評しており、その背景にある金銭的な問題を指摘しています。それでも、ラロ・シフリンが手掛けた音楽は高く評価され、アカデミー賞作曲賞にもノミネートされました。

シリーズとリメイク

『悪魔の棲む家』は、大ヒットを収めたことで、数多くの続編が制作されました。また、2005年にはマイケル・ベイ製作によってリメイク版も公開されています。オリジナル版とリメイク版では、ストーリー展開や登場人物、超常現象の描写などに違いが見られます。例えば、オリジナル版では重要な役割を担っていた神父や刑事のキャラクターが、リメイク版では排除されています。幽霊少女の描写や、主人公ジョージの性格変化なども、両作品で異なっています。

まとめ

『悪魔の棲む家』は、実話に基づいた物語であると同時に、その背景には複雑な人間関係や金銭トラブルが絡み合っている作品です。映画としての完成度や、実話との差異、そして数多くの続編やリメイクなど、様々な角度から考察できる奥深い作品となっています。観客は、恐怖だけでなく、背筋を凍らせるような真実にも触れることになるでしょう。

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