愛の奇跡

愛の奇跡

「愛の奇跡」は、日本を代表する男女デュオ「ヒデとロザンナ」が、その音楽キャリアをスタートさせた記念すべきデビューシングルです。1968年10月15日にリリースされました。

当初B面だった楽曲と地道な普及活動

このシングルが発売された当初、レコード会社が主要なプロモーション対象としていたのは、カップリングに収められていた「何にも言えないの」という楽曲でした。「愛の奇跡」は、シングル盤においては補助的な位置づけであるB面曲としての扱いだったのです。

リリース当初、この作品は音楽市場で大きな波を起こすには至らず、期待されていたほどの注目を集めることはありませんでした。ヒデとロザンナの二人は、当初A面として設定されていた「何にも言えないの」を広めるため、文字通り全国を巡る地道なキャンペーン活動を展開します。彼らはまず福岡を出発点として、日本各地のレコード店などを訪ね、楽曲の認知度向上に努めました。

意外な場所からのブレイク

しかし、この楽曲の運命は予期せぬ方向へと展開します。キャンペーン中に訪れた佐賀県の有線放送において、驚くべきことに、メインではなかったB面曲「愛の奇跡」へのリクエストがリスナーから殺到し始めたのです。プッシュしていたA面ではなく、B面曲に突如として火が付くという、当時の音楽業界では極めて異例の現象が起きました。

この佐賀での反響がきっかけとなり、「愛の奇跡」の人気は地方から全国へと急速に広まっていきます。1969年の年明け、特に1月下旬頃からは、楽曲に対する問い合わせやラジオ・有線へのリクエストが加速度的に増加し、多くの人々に知られる存在となりました。

チャート上昇とミリオンヒット達成

人気が爆発した「愛の奇跡」は、販売枚数を飛躍的に伸ばします。リリースから約4ヶ月が経過した1969年2月24日付のオリコンシングルチャートで、見事トップ10圏内へと食い込みました。その後もその人気は衰えることなく、およそ2ヶ月間にわたってオリコンチャートのトップ10内にランクインし続けるという、粘り強いヒットとなりました。

最終的な累計売上は、資料によって80万枚とも、あるいは100万枚を突破しミリオンセラーを達成したとも伝えられています。いずれにしても、当初B面として扱われながら、後に爆発的なヒットを記録し、彼らの代表曲となったこの楽曲は、日本のポピュラー音楽史においても特筆すべき一曲と言えます。

CDシングルとしての再登場

時代が下り、1991年7月21日には、「愛の奇跡」が8cmCDシングルという形式で再リリースされました。これは「スーパー・セレクト・シリーズ」の一つとして発売されたもので、ヒデとロザンナの代表的な楽曲がカップリングされています。

このCD化に際しては、オリジナル盤のカップリング曲「何にも言えないの」ではなく、彼らの別のヒット曲であり代表曲でもある「愛は傷つきやすく」がカップリングに選ばれました。このため、このCDシングルは「愛の奇跡」と「愛は傷つきやすく」という二つの大きなヒット曲を収録した、実質的に両A面シングルとしての性格を持っていました。

収録曲リスト

オリジナルシングル盤（17cmシングルレコード）
愛の奇跡 (2分12秒)
作詞：中村小太郎
作曲：田辺信一
編曲：中川昌
何にも言えないの (2分7秒)
作詞：中村小太郎
作曲：城二三八
編曲：中川昌

1991年再リリース盤（8cmCDシングル）
愛の奇跡 (2分12秒)
作詞：中村小太郎
作曲：田辺信一
編曲：中川昌
愛の奇跡（オリジナル・カラオケ）
愛は傷つきやすく (3分16秒)
作詞：橋本淳
作曲：中村泰士
編曲：森岡賢一郎
愛は傷つきやすく（オリジナル・カラオケ）

後世への影響とカバー

「愛の奇跡」は、その美しいメロディと感動的な歌詞ゆえに、時代を超えて多くの人々に歌い継がれています。ヒデとロザンナのロザンナ自身も、1997年にリリースしたシングルの中で、この曲を新たなアレンジ（MIRACLE MIX）でセルフカバーしています。また、日本を代表するシンガーソングライターである桑田佳祐も、2022年のライブでこの名曲をカバーし、そのパフォーマンスはライブ映像作品に収録されています。

このように、「愛の奇跡」は、リリース当初の予想を覆す異例のヒットストーリーを辿り、ヒデとロザンナの輝かしいキャリアの出発点となると同時に、日本の音楽シーンに深く刻まれた不朽のスタンダードナンバーとして、今なお多くの人々に愛され続けています。

もう一度検索