感想戦

感想戦：棋力の向上と礼儀の狭間で

感想戦とは、囲碁、将棋、チェス、麻雀といったゲームにおいて、対局終了後に互いの着手を振り返り、その良し悪しや最善手を検討する行為です。将棋では一般的な用語ですが、囲碁では「局後の検討」と呼ばれることが多いようです。対局者だけでなく、観戦者も参加し、棋譜や記憶を頼りに、対局を再現しながら行われます。

プロとアマチュアの感想戦

プロ棋士の世界では、公式戦後にはほぼ必ず感想戦が行われます。特にタイトル戦では、大勢の観客を前に大盤解説が行われた後に、対局者同士で改めて感想戦を行うことも珍しくありません。プロ棋士は、対局の棋譜を全て記憶していることが多いので、詳細な検討が可能です。一方、アマチュアにおいても、高段者や上級者レベルになると、棋力向上のため感想戦を行うケースが増えます。

しかし、プロ棋士の間では、感想戦において研究会の仲間であっても内容を明かすことに消極的な姿勢や、相手への遠慮から当たり障りのない発言にとどめる傾向が見られるという指摘もあります。これは、戦略や戦術の機微を他者に知られることを避け、自身の優位性を保つための配慮と言えるでしょう。

国際的な視点：チェスとコントラクトブリッジ

チェスでは、感想戦に相当する行為を「post mortem」と呼び、コントラクトブリッジの競技でも同様の表現が使われます。大規模な大会では、対局者たちが感想戦を行うための別室が設けられることもあります。これは、進行中の対局を妨げないように配慮した配慮と言えるでしょう。

囲碁では、対局後に感想戦を行わずに帰っても問題視されることはありませんが、タイトル戦などではイベントの一部として組み込まれている場合もあります。チェスでは、重要な大会では感想戦が行われますが、時間的な制約がある場合は省略されることもあります。これは大会の規模や規定によって異なるでしょう。将棋では、感想戦はルール上規定されていません。したがって、感想戦を拒否してもペナルティはありません。

感想戦を辞退した事例

プロ棋士が公式戦で感想戦を辞退するケースも存在します。これは、体調不良や個人的な事情が理由として挙げられます。しかし、観戦記者やファンがいる対局では、感想戦は一種のサービスという側面も持ちます。そのため、感想戦が行われないことは、異例と捉えられることが多いです。

いくつかの具体的な例を挙げましょう。1989年、高橋道雄九段は棋聖戦で敗れた後、感想戦を辞退しました。2017年には、加藤一二三九段が引退対局で感想戦を辞退し、2020年には橋本崇載八段が藤井聡太二冠との対局後、藤井二冠の多忙さを考慮して感想戦を辞退しています。これらのケースは、それぞれ異なる事情を抱えていたことが背景にあります。

まとめ

感想戦は、棋力向上に繋がるだけでなく、対局者同士の交流や、ファンへのサービスといった側面も持ち合わせています。その実施の有無や内容には、様々な要因が複雑に絡み合っていると言えるでしょう。将来的には、感想戦のあり方についても、さらに議論が深まることが期待されます。

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