新規性

特許制度における新規性とは

特許制度における新規性とは、発明が既存の技術（先行技術）と同一でないことを指す、特許を受けるための重要な要件の一つです。つまり、その発明が過去に公に知られていた技術そのものではないことを意味します。

先行技術の定義

新規性を判断する上で、どの範囲の技術を「先行技術」とみなすかが重要になります。具体的には、以下の3つの観点から検討されます。

1. いつ？
先行技術として考慮されるのは、特許出願時に存在していた技術です。発明が完成した時点ではなく、出願時に基準が置かれるのは、発明完成時の定義や証明が困難であるため、多くの国が採用している先願主義に基づいています。

2. どのように？
先行技術は、以下のいずれかの方法で公に知られていた技術を指します。
公知技術: 技術分野の専門家に広く知られている技術
公用技術: 隠匿することなく公然と実施されており、誰もが知ることができた技術
文献公知技術: 誰もが入手可能な文献に記載された技術
これらの技術は、実際に誰もが知っていた必要はなく、誰でも知り得る状態にあったという点が重要です。
一方で、一部の人だけが知っていた技術、秘密裏に実施されていた技術、限られた人にしか配布されない文書に記載された技術は先行技術には含まれません。

3. どこで？
技術が公知、公然と実施、または文献公開された場所も重要です。
国内公知: 各国とも国内での公開は先行技術となることに同意しています。
世界公知: 一方、外国での公開を先行技術に含めるかどうかは国によって異なります。

新規性喪失の例外

出願前に発明者自身が発明を公開した場合、本来であればその発明は新規性を失い、特許を受けられなくなります。しかし、この状況はあまりにも不合理であるため、多くの国では新規性喪失の例外（グレースピリオド）という制度が設けられています。

この制度により、発明者や出願人自身による公開は、一定の条件のもとで新規性喪失の理由とは見なされません。

また、パリ条約に加盟する国では、同盟国で開催される公的な国際博覧会に出品された発明に対して、特許を受ける権利を保護するための仮保護措置を設ける義務があります。そのため、これらの博覧会への出品による発明の公開も、新規性喪失の例外として扱われます。

拡大先願・準公知

多くの国の特許法では、新規性があっても、その出願よりも先に出願された別の特許出願に含まれる発明は、特許を受けることができません。

例えば、出願A、出願B、出願Aの公開という時系列で手続きが進んだ場合、出願Bは出願時点では出願Aが公開されていないため新規性はありますが、客観的に新しい技術を開示しているとは言えません。そのため、出願Bは出願Aによって拒絶されることになります。

この規定は、先に出願した者に特許を与えるという先願主義の規定を、請求範囲だけでなく明細書全体に拡大して適用するものと捉えられ、拡大先願と呼ばれます。一方、公知技術には特許を与えないという原則から、準公知とも呼ばれます。

各国の基準

新規性の基準は国によって異なります。以下に代表的な国の基準をまとめます。

日本

日本の特許制度は、先願主義を採用し、世界範囲での公知、公用、文献公知、準公知技術に対して新規性を認めない制度となっています。

日本の新規性の判断基準は、出願時を基準としているため、同日に公知になった発明についても問題になります。

また、文献公知は、「頒布された刊行物に記載」または「電気通信回線を通じて公衆に利用可能」であることが要件とされており、インターネットを通じて公開され、公衆がアクセス可能な情報も新規性を失う要因となります。

まとめ

特許制度における新規性は、技術革新を促進するための重要な要素です。この制度を正しく理解し活用することで、技術開発の成果を適切に保護し、産業の発展に貢献することができるでしょう。

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