東マレーシア

東マレーシア：ボルネオ島北部の多様な地域

東マレーシアは、ボルネオ島北部に位置するサバ州、サラワク州、ラブアン連邦直轄領の3つの地域から構成されています。マレー半島にある西マレーシア（半島マレーシア）とは対照的に、島嶼（とうしょ）マレーシアとも呼ばれ、南シナ海を挟んで隔てられています。東マレーシアは、西マレーシアに比べて人口は少ないものの、広大な領域を持ち、特に石油やガスなどの天然資源が豊富です。

歴史

かつて東マレーシアの一部はブルネイ帝国の影響下にありましたが、内陸部は独立した部族社会でした。17世紀には沿岸部がスールー王国に割譲され、その後19世紀にイギリスの保護領となり、1946年にはイギリスの植民地となりました。第二次世界大戦後、サバ州とサラワク州は1963年にマラヤ連邦に加わり、現在のマレーシア連邦の一部となりました。

連邦化

サバ州とサラワク州は、当初マラヤ連邦には含まれておらず、それぞれの地域で自治権を持っていました。1963年にマラヤ連邦、シンガポールと共にマレーシア連邦を構成することになりましたが、ブルネイは連邦化に参加しませんでした。東マレーシアの2州は、西マレーシアの州よりも高い自治権を持ち、独自の入国管理制度や土地法を持っています。

統治

東マレーシアは、マレーシア連邦の中で独自の地位を保っています。サバ州とサラワク州は、西マレーシアの州とは異なり、連邦内の州でありながら独自の入国管理法を持つなど、一定の自治権を保持しています。司法制度においては、連邦裁判所の一部ではあるものの、独自の高等裁判所も設置されています。

政治

東マレーシアは、連邦議会において一定の議席数を確保しており、マレーシアの政治において重要な役割を担っています。しかし、東マレーシアの代表者からは、議席数が人口比率に比べて少ないという不満の声も上がっています。近年、東マレーシアの地域政党は独自の発展を遂げており、州内での政党交代や執行部の争いも頻繁に起きています。

自然地理

東マレーシアの大部分は、熱帯雨林に覆われており、山岳地帯も広がっています。特にキナバル山は、東南アジアでも有数の高峰として知られています。また、ラジャン川やキナバタンガン川といったマレーシア最長の川も東マレーシアを流れています。サバ州やサラワク州には、世界遺産に登録されている自然公園や、多様な生物が生息する島々があり、豊かな自然環境が残されています。

地質

東マレーシア沖合には、油田やガス田が点在しており、重要なエネルギー資源の供給源となっています。これらの油田やガス田は、深海に位置し、複雑な地層構造の中に存在しています。

人口

2010年の時点で、東マレーシアの総人口はマレーシア全体の約20%を占めており、主要な都市には多くの人々が居住しています。東マレーシアには、ドゥスン族やダヤク族などの固有の民族が居住していますが、近年はマレー諸島各地やインド、中国からの移民も増加しています。宗教は、アニミズム、キリスト教、イスラーム教などが信仰されています。

教育

東マレーシアには、マレーシア大学サラワク校（UNIMAS）やマレーシアサバ州大学（UMS）などの公立大学があります。また、私立大学や海外大学の分校も存在しており、高等教育の機会が提供されています。

運輸

東マレーシアでは、汎ボルネオ高速道路が主要な交通路となっていますが、維持管理の問題も指摘されています。空路では、主要都市を結ぶ空港があり、国内外へのアクセスが可能です。また、河川輸送も重要な役割を担っており、特にサラワク州では、人や物資の輸送に広く利用されています。

治安

サバ州では、1950年代から国境を越えたテロが発生しており、治安上の懸念があります。そのため、東部サバ州保安地帯（ESSZONE）が設置され、夜間外出禁止令も発令されています。治安維持のための対策が講じられています。

まとめ

東マレーシアは、マレーシア連邦の一部でありながら、独自の歴史、文化、自然環境を持つ多様な地域です。天然資源の豊富な地域として、経済発展にも重要な役割を担っていますが、一方で、治安や開発の問題も抱えています。

参考資料

Andrew Harding & James Chin, 50 years of Malaysia: Federalism revisited (Marshall Cavendish 2014)
Cabinet Memorandum. Policy in regard to Malaya and Borneo. Memorandum by the Secretary of State for the Colonies. 29 August 1945
Manila Accord (31 July 1963)
Exchange of notes constituting an agreement relating to the implementation of the Manila Accord of 31 July 1963
Acts of the Parliament of the United Kingdom Malaysia Act 1963
Agreement relating to Malaysia between United Kingdom of Great Britain and Northern Ireland, Federation of Malaya, North Borneo, Sarawak and Singapore

外部リンク

* バーチャルマレーシア – マレーシア観光省の公式ポータル

もう一度検索