根井三郎

根井三郎: 命のビザを発行した外交官

根井三郎（ねい さぶろう）は、1902年に宮崎県で生まれた日本の外交官であり、法務官僚でした。彼は、第二次世界大戦中に多くのユダヤ人難民を救うために活動し、特に杉原千畝が発行した「命のビザ」を使ってウラジオストクから日本へ逃れる支援をしたことで知られています。1992年に90歳で亡くなるまで、根井の名は広く知られることはありませんでしたが、その功績は近年になって顕彰されるようになりました。

経歴と外交官としての業績

根井は1902年3月18日に、当時の宮崎郡廣瀬村（現在の宮崎市佐土原町）で生まれました。彼は広瀬尋常高等小学校を卒業後、長崎県立中学校を経て、1921年に外務省留学生として外務省に入省しました。1924年には日露協会学校を修了し、外交官としてのキャリアをスタートさせます。

彼の外交官としての経歴は、1925年に始まり、当初は在ハルピン日本領事館で勤務し、その後ウラジオストク総領事館に異動しました。根井は1930年代に何度もウラジオストクでの勤務を繰り返し、最終的にはソビエト連邦内での任務に就くことになります。ただし、彼が特に知られるようになったのは、第二次世界大戦中のユダヤ難民に対する支援の業績でした。

「命のビザ」と根井の特別な対応

ナチス・ドイツの迫害から逃れるユダヤ人難民がリトアニアの杉原千畝からビザを取得し、ウラジオストクへ向かう中、根井はそのビザを持つ人々のために行動しました。彼は1940年8月に在ウラジオストク総領事館に着任し、以来ユダヤ難民の受け入れを推進しました。根井は外務省の指示に対し、難民の命を守るために逆らい、ビザを持つ彼らに渡航証明書を発給しました。

特に、根井は1941年に外務省が杉原のビザを再検閲することを指示した際に、国際的な信用を考慮してその命令に異を唱えました。彼の決断により、ビザを持つユダヤ人難民は日本へ渡航できる道を開かれ、彼らは敦賀港を経由して日本に入国することができました。根井自身もビザ発給をしていたことが後に判明し、それは「根井ビザ」として知られています。

戦後の人生と顕彰活動

戦後、根井は外務省を退職し、その後も国に仕えるべく入国管理業務に従事しました。たくさんの難民を助けたにもかかわらず、彼はその功績を語ることはなく、故郷においても彼の名は長らく知られませんでした。彼が亡くなった後、近年になって彼の業績が見直され、顕彰活動が行われるようになりました。

2015年に開催された「戦後70年記念事業」や、顕彰会の設立などを通じて根井の功績が広く知られるようになりました。彼の姿勢と行動は、国や状況を超えた人道的な橋渡しの重要性を教えてくれます。根井三郎は、真の人道的外交官として、多くの命を救ったその足跡を今なお伝えています。

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