桃の天然水

桃の天然水：華原朋美CMで一世を風靡した清涼飲料水の軌跡

1996年、サントリーフーズ（現サントリー食品インターナショナル）から発売された「桃の天然水」。発売当初は低迷していたものの、1998年、当時絶大な人気を誇っていた歌手、華原朋美を起用したCMが、大ヒットを記録しました。CMで華原朋美が連呼した「ヒューヒュー」は流行語となり、年間1600万ケースというJT飲料部門の最高記録を樹立、食品ヒット大賞を受賞するまでに至ります。

しかし、その後はカビ混入による回収騒動や無糖飲料市場の成長といった逆風を受け、売上は減少傾向に。味やパッケージのリニューアル、新たなフレーバーの追加、著名人起用のCMなど、様々な施策が実施されましたが、売上増加には繋がりませんでした。

2006年には発売10周年を記念して、発売当初の味とパッケージを再現した「復刻版」を発売。さらに、2011年には炭酸飲料「桃の天然水 SPARKLING」を発売するなど、新たな展開も試みました。2012年には15周年を迎え、パッケージリニューアルと販売再開。500mlペットボトルに加え、490ml缶、1.5Lペットボトルもラインナップに加わりました。モンドセレクション金賞、最高金賞を受賞するなど、品質の高さが認められました。

2015年、JTが飲料事業から撤退。サントリー食品インターナショナルがブランドを取得し、セブン＆アイ・ホールディングス傘下系列店限定で復活。サントリー天然水を使用し、内容量も増量されました。「桃の天然水 SPARKLING」も復活しましたが、2021年には「サントリー天然水」ブランドの新商品発売に伴い、全ての商品が製造終了となり、ブランドは終息を迎えました。

多彩なCM戦略

「桃の天然水」の成功には、CM戦略が大きく貢献しました。1998年の華原朋美起用を皮切りに、1999年には浜崎あゆみを起用。2000年には「桃天3人娘」として若手アイドルを起用するなど、時代を反映したキャスティングが展開されました。2001年にはデヴォン青木、2006年には再び華原朋美、2013年にはローラを起用するなど、幅広い層への訴求を目指しました。特に、2006年の華原朋美起用は、1998年のCMと織り交ぜた演出で話題となりました。

多様な商品展開

「桃の天然水」は、桃以外にも、苺、りんご、レモン、青りんご、マスカット、ライチ、さくらんぼ、夏みかん、梅、マンゴーなど、様々なフレーバーを展開。ゼリーや紅茶、ソーダ、スパークリングなど、形態も多様化しました。期間限定商品やコンビニ限定商品も存在し、常に消費者のニーズを探る姿勢が見て取れます。また、2012年のリニューアルでは、「桃の天然水 ライト」「桃の天然水 クリア」といったバリエーションも登場しました。

ブランド終息

数々の試行錯誤を経て、2021年、「桃の天然水」ブランドは終息を迎えました。華原朋美を起用したCMや、多様な商品展開で一世を風靡した「桃の天然水」は、日本の清涼飲料水市場に大きな足跡を残しました。その歴史は、時代の流れや消費者の嗜好の変化を反映しており、マーケティングの成功例として、そして時代の変遷を知る上で貴重な資料となっています。

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